かつて飛騨地域の西の玄関口だった高山市荘川町牧戸のバス停「牧戸駅」の歴史を伝えようと、地元の牧戸町内会が閉鎖していた駅舎を生まれ変わらせた。待合室に当時の史料やパネルを展示し、いつでも見学できるように整備。町内会長の寺田俊明さん(61)は「駅には地区の歴史が詰まっている。地域の産業記憶遺産として心に留めてもらえたら」と話す。
 駅は一九三三年、郡上市白鳥町まで結ぶ国営バスの停留所として開業。昭和四十年代には紅葉やスキーの観光客でにぎわったが、自動車の普及とともに利用者は減少。二〇〇八年に東海北陸自動車道が全線開通すると、高山と白川郷を牧戸駅経由で結んでいたバスが通らなくなり、路線バスの本数も減った。待合室や乗務員の宿泊所などとして使われていた駅舎は二年前に閉鎖され、停留所のみが残っていた。
 牧戸地区は駅を中心に商店街が発展し、当時は映画館や旅館も立ち並んで栄えた。駅舎には、名古屋と金沢間に桜を植えたことで知られる旧国鉄バス「名金線」の車掌故・佐藤良二さんも寝泊まりしたという。「小さかったころ、頭をなでてもらった記憶がある」と寺田さん。
 そんな多くの思い出が詰まった駅を残そうと、町内会は昨年、市から無償で借り、保存活動を始めた。開業当時の駅舎やボンネットバスなどの写真、売店で売っていたおもちゃや昔の時刻表などを集めて展示。壁には年表や地図、牧戸城の歴史をまとめたパネルなどを飾った。寺田さんは「ふらっと通り掛かった人にも、歴史に思いを寄せてもらえたら」と話している。

 (片山さゆみ)