高慢と偏見とゾンビ

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上映中の『高慢と偏見とゾンビ』は、そのタイトルが示す通り、恋愛小説の名作とされる『高慢と偏見』の物語にゾンビを登場させてしまったというトンデモ内容の映画です。

『高慢と偏見とゾンビ』(以下、本作)の魅力がどこにあるのか。そしてどう楽しむべきなのか。それをたっぷりとお伝えします。大きなネタバレはありません。

1.実はほぼ『高慢と偏見』そのまま!ゾンビはあくまで“添え物”?

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本作の原案となる『高慢と偏見』の内容を端的に、下世話な感じに表現すると、“主人公はたくさんの高収入のイケメンたちに求婚されるけど、最終的に真実の愛に気付いていく”というものです。今の少女マンガの典型とも言えるようなストーリーですね。当時のイギリスでは“女性には遺産の相続権がないから、娘に結婚をさせなければおまんまの食い上げになる”という世相もあるため、『高慢と偏見』で描かれた価値観の1つ“お金より愛”は痛烈な皮肉となっているわけです。

さて、本作はそんな『高慢と偏見』の物語が“ほぼそのまま”だったりします。つまり、遺産相続の問題や数々のイケメンとの恋愛話が展開する中、ゾンビが半ば無理矢理ねじ込まれるという作風になっているのです(笑)。

これは、本作が“パロディ”ではなく “マッシュアップ”という作風で制作されたためでもあります。あくまでベースは『高慢と偏見』であり、ゾンビはその中の要素の1つという塩梅なのです。

ゾンビがわらわらと出てきて、バカスカと撃ち殺しまくる内容だと思っていると、ちょっと期待外れになってしまうかもしれませんね。そうしたゲテモノっぽいB級映画にはせず、あくまで真面目で、『高慢と偏見』にリスペクトを捧げた作風に仕上げたのは、本作の美点です。

なお、本作の監督は『10日間で男を上手にフル方法』や『セブンティーン・アゲイン』などのバー・スティアーズで、そのフィルモグラフィーを見ても、本来はゾンビやアクションではなく、ラブコメディやメロドラマを得意としていることがわかります。

そんなわけで、本作は基本的には典型的なラブストーリーであり、忘れた頃に“添え物”な印象のゾンビが出てくる、という内容だと思って観ることをオススメします。

とはいえ、ゾンビの出番が少なくてガッカリということもなく、クライマックスにはしっかりとしたアクションも用意されているので安心(?)してください。

ちなみに、本作の原作小説を手がけたセス・グレアム=スミスは、“リンカーン大統領がヴァンパイアハンターだった!”というトンデモ設定の小説『ヴァンパイアハンター・リンカーン』も執筆しており、『リンカーン/秘密の書』のタイトルで映画化もされています。

2.『プライドと偏見』を観ておくとおもしろさが5割増し!

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前述の通り、本作は“『高慢と偏見』ほぼそのまま、だけどたまにゾンビが出てくる”という内容です。そのため、『高慢と偏見』を読んでおくと「あのセリフがゾンビのせいで違う意味になっている!」、「いいシーンなのにゾンビのおかげでひどい(褒めています)ことになっている!」とさらに楽しむことができます。

個人的に大笑いしたのは、鼻持ちならない男・ダーシーの「多才な女性には6人しか会ったことがない」というセリフから続く、“多彩な女性の条件”ですね。ぜひ、「そんな女性いるわけねーだろ!」と心の中でツッコミを入れてください(これもゾンビがいるせいです)。

しかし小説であると、読了するハードルが高いと思う方も多いでしょう。その場合は、2005年のキーラ・ナイトレイ主演の映画『プライドと偏見』を観ておくことをオススメします。

ヴィクトア朝の美術や世相、登場人物の特徴、洗練された映像は本作と共通しており、序盤のダンスシーンに至ってはこれまた“ほぼそのまま”なのです。画は格調高く、しっかりラブストーリーが展開するのに、たまに汚いゾンビが現れるというギャップ(笑)は、『プライドと偏見』と見比べてこそ、おもしろいのです。

ちなみに、『高慢と偏見』は1995年にもテレビ映画製作をされており、こちらでダーシーを演じるのは『英国王のスピーチ』や『キングスマン』のコリン・ファースでした。コリン・ファースは、『高慢と偏見』から強い影響を受けた『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズにも出演しており、その役名が“ダーシー”だったりします。

3.ヒロインは少林寺拳法とナイフで、ヒーローは日本刀で戦う!

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本作ではゾンビに対抗するために、主人公のリジーとその姉妹は少林寺拳法とナイフ術を繰り出し、ヒーローとなるダーシーは日本刀で斬りかかるという、アホらしい(超褒めています)設定のアクションが盛り込まれています。

肉体派で戦う主役の2人を演じるのは、『シンデレラ』で主演を務めたリリー・ジェームズと、『マレフィセント』で皮肉屋のカラスの部下を演じたサム・ライリーです。ディズニー映画に出演した売れっ子俳優がゾンビと戦っているだけでたまらないものがありますね。

大笑いしたのは、そんなリリー・ジェームズとサム・ライリーが“戦いながら会話をする”シーン。そのアクションだけでもおもしろいですし、これも『プライドと偏見』などで元のセリフとシチュエーションを知っているとおかしさが倍増します。

なお、監督は『七人の侍』にならって、それぞれの登場人物に根差した戦い方を考案したのだとか。原作小説に従い、ダーシーなどの富裕層は日本流、中流階級のリジーとその姉妹は中国流と分けることで、身分の違いを浮き彫りにしていたのだそうです。設定がアホらしいと言い捨ててはいけないかもしれませんね。

4.ゾンビ映画ならではのおもしろさもしっかりある!

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ゾンビには“昔ながらの歩くゾンビ”、“最近の走って襲いかかってくるゾンビ”、“コミュニケーションの取れるゾンビ”など様々な種類があります。本作で登場するゾンビがどのカテゴリーかは内緒にしておきますが、「そうきたか!」と驚けるのではないでしょうか。

見所は、ゾンビたちがヴィクトリア朝の衣装を着ていること。汚いゾンビの顔とエレガントな衣装のコントラストは、他のゾンビ映画にはない魅力がありました。

なお、本作は日本ではG指定(本国でもPG-13指定止まり)でありグロテスクな描写は控えめですが、“ナイフや日本刀でゾンビを近距離から斬りつける”や“ヘッドショットでゾンビの頭をぶち壊す”というゾンビ映画ファンにはたまらない描写も盛りだくさんです。

5.実はデートにもおすすめ?

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本作はここまで書いてきたように、恋愛を描いた名作小説にゾンビの要素を付け加えたという内容です。これはつまり、ラブストーリーが好きな女の子と、ゾンビが大好きな男の子の両方の需要を満たすことができるという、デートにはもってこいの映画なのではないでしょうか。

観たい映画のジャンルを巡って恋人同士でケンカをする必要はありません。『高慢と偏見とゾンビ』を観れば、どちらも幸せになれるのではないでしょうか。ぜひカップルで劇場に足を運んでください!

(文:ヒナタカ)