ジェイソン・ボーン バイク1

(C)Universal Pictures

みなさん、こんにちは。

10月7日より、ポール・グリーングラス監督の『ジェイソン・ボーン』が公開となりました。このタイトルからも解る通り、本作は『ボーン・アイデンティティー』から始まる、いわゆるボーンシリーズの最新作。外伝的な立ち位置となるジェレミー・レナー主演の『ボーン・レガシー』を除けば、2007年公開の『ボーン・ウルティメイタム』以来、9年ぶりの新作、新章スタートとなります。今回の「映画音楽の世界」では、そんなマット・デイモン主演の『ジェイソン・ボーン』を紹介したいと思います。

ボーンの帰還と新たなキャラクターの登場

本作の製作開始のニュースが流れたとき、一斉に映画ファンが色めき立ったほどの人気を誇るボーンシリーズ。しかも監督のポール・グリーングラス、タイトルロールであるジェイソン・ボーンにマット・デイモンが再登板ということで(ちなみに第一作目アイデンティティーはダグ・リーマンが監督、二作目『ボーン・スプレマシー』、三作目アルティメイタムをグリーングラスが監督)、まさに正統的な続編として新シリーズが幕を開けた形になります。

いざ鑑賞してみれば、全編に渡るアクションのつるべ打ち。グリーングラスが確立したともいえる洗練されたファイトやカー・チェイスが、本作でも世界各地に舞台を広げ、畳みかけるように展開していきます。カメラが間近まで迫る格闘シーンやチェイスシーンはもはやこちらの動体視力を試されているかのような距離感で、このシリーズの持ち味は健在。

さらに本作では、ボーンの新たなる敵となるCIA長官デューイを『逃亡者』でハリソン・フォードをとことん追い詰めた名優トミー・リー・ジョーンズが演じ、その部下である新人(離れした能力を発揮することになる)エージェントであるリーを『コードネーム U.N.C.L.E.』『エクス・マキナ』と出演作が続き『リリーのすべて』でアカデミー助演女優賞を獲得した、最も勢いに乗るアリシア・ビカンダーが演じています。あえて濃い目のメイクなのかどこか病的な影を帯びる表情のエージェント・リー、これが一筋縄ではいかないキレ者というのが、いかにこのシリーズが高度なサスペンス性も備えているかその表れではないでしょうか。

そしてデューイ長官と、彼の操る、ヴァンサン・カッセル演じる作戦員の冷酷な行動の数々。この辺りはシリーズを通して観てきたファンにとってはお馴染みの、ストーリーにも妥協を許さないグリーングラス節といったところでしょうか。この二人がまた、渋い。さすが米仏を代表する俳優の魅力、このシリーズ初参戦となるキャラを追うだけでも、スタイリッシュアクションに加え十分に楽しめると思います。

ジェイソン・ボーン トミー・リー・ジョーンズ

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復帰したのは監督、主演コンビだけではない!

本作はユニバーサルロゴで幕を上げますが、そこに充てられた音楽は有名なファンファーレではなく、シリーズのファンならばいきなり世界観に浸れることになる、ボーンのテーマ曲。監督、我慢出来なかったのですね(笑)。本作の音楽を担当したのは、ボーンシリーズ三部作を担当したジョン・パウエル。以前、映画音楽事件史の記事でも紹介しました映画音楽からの半引退宣言をした作曲家であり、グリーングラス監督がわざわざ前作『キャプテン・フィリップス』にてパウエルの既存曲をクライマックスに使用するほどの復帰ラブコールを受けた人物でもあります(映画ファンの間では『ヒックとドラゴン』の音楽が有名でしょうか)。

まさに、そのラブコールに応える形となった本作の音楽。ボーンシリーズのテーマ曲だけでなく、チェイスシーンなどで流れるパーカッションの乱れ打ちはシリーズの原点とも言えます(実際、パウエルも『ボーン・アイデンティティー』の劇伴を境にオーケストラメインの楽曲からパーカッションメインのアクションスコアに移行しいてます)。クラッシュシーンの連続であるバイク、カーチェイスをさらに鼓舞するアップビートな曲はシリーズのファンだけでなく観る者すべてのボルテージをさらに高めてくれるはず。余談ですが、デビュー作である『フェイス/オフ』以来のパウエルサウンドファンである筆者にとっても、パウエルのボーンシリーズ復帰は嬉しいものがありました。

Jason Bourne Jason Bourne

本作の音楽はシリーズ初となる、デヴィッド・バックリーとの共同作曲という形を取っています。パウエルに比べれば彼の名前を知っている映画音楽ファンも少ないとは思いますが、パウエル同様バックリーもハンス・ジマーが主催する音楽スタジオの一員で、ハリー・グレッグソン=ウィリアムスを師匠に単独デビュー作とは思えない大胆なオーケストレーションを見せた『ドラゴン・キングダム』や、ベン・アフレック監督作の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』や『ザ・タウン』を作曲した注目株の一人です。ちなみに新作音楽はラッセル・クロウ、ライアン・ゴズリング共演の『ナイスガイズ!』。

まとめ

新シリーズ突入を告げるに相応しいアクションと初参戦キャラクター。エンドロールで流れるモービー(Moby)の[Extreme Ways]を聴けば、「あぁ、ジェイソン・ボーンが帰って来たのだ」と感慨深くなると同時に、次なる戦いへと誘うサウンドとしては効果抜群。果たして、「あのキャラ」(あえて名前は伏せる)は次作にも登場するのか、再び登場したならばどう動くのか、ボーンの活躍とともに目の離せない、期待値を高めて新シリーズ第二章を待ちましょう。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

(文:葦見川和哉)