2014年に亡くなった名優・高倉健さんの付き人を約40年にわたって務めた西村泰治氏(78)が健さんとの日々、絆について語った。西村氏は健さんの実像に迫り、第40回モントリオール世界映画祭でドキュメンタリー部門の最優秀作品賞を受賞した映画『健さん』(全国公開中)にも出演している。

 「これからダンナ(健さん)のこと、話しますで」と健さんのお気に入りで指定席もあった京都・烏丸御池の喫茶店「イノダコーヒー」で話し始めた西村氏。健さんの分のコーヒーも頼んだ西村氏は、健さんとの出会いのきっかけは中村錦之助(後の萬屋錦之介)さんだったことを明かす。東映撮影所に出入りしてチョイ役で映画にも出演していたという西村氏は、錦之助さん主演の時代劇映画『祇園祭』(1968年)で共演した健さんに「カッコいい!」と惚れ込み、錦之助さんに紹介してもらって付き合いが始まったという。

 以来、健さんが撮影などで京都を訪れた際には西村氏の家に泊まるようになるなど「ヤス」「ダンナ」と呼び合う仲になった西村氏。約40年間、付き人としてともに時間を過ごし、「ダンナに嘘をついて近寄ってくる人が多いから、惑わされないようにしないとあきまへん」と健さんの番人も担当し、寝坊魔で知られる健さんの起こし役も任されていた。

 健さんの起こし方について西村氏は「まず背中をさすりながら、『ダンナ、時間ですよ。撮影ですから、お願いします』と声をかけ、このときのBGMはベートーベン」と述懐する。健さんは「あっこんな時間か」と言いつつ、「あと5分寝かせてくれ」と二度寝をするそうで、「そこでBGMは派手めなジャズに変え、それでもまだ『あと5分』を繰り返した時は、『八甲田山』のパンパーンの音楽……」。この工夫で西村氏の家に泊まった時の健さんは一度も撮影所に遅刻しなかったというのが、西村氏の自慢でもあるそうだ。

 71年の江利チエミさんとの離婚、健さんが最愛の母親を亡くした時などの苦しい時、しんどい時も一緒だったという西村氏は、健さんから「何でだろうな。(そういう時は)お前と一緒やな。不思議な縁があるんやろな。ありがとう」と感謝の言葉をかけられていたという。「『人を大事にし、見えないところに気遣いができる男になれ』と健さんから言われた。僕がいま過ごせるのは健さんのおかげ。映画から健さんの生き様を感じ取ってほしい」と本作について熱く語っていた。(取材・文:岩崎郁子)