早逝した棋士・村山聖九段の壮絶な一生を松山ケンイチ主演で描いた映画『聖の青春』公開記念イベント「羽生王座が語る 棋士の境地」が19日に都内で行われ、村山九段が生涯のライバルとして目標に掲げた羽生善治王座と大崎善生(原作者)が出席し、思い出話に花を咲かせた。

 現在3冠を保持する羽生王座は、1996年に将棋界にある7冠全てを獲得するという史上初の偉業を成し遂げた天才。一方、そんな羽生と互角に戦い、「東の羽生、西の村山」と並び称されながら、難病によって29歳で亡くなった村山九段。

 羽生は、「最初に会った時のインパクトがすごかった」と切り出すと、近くで対局を見ていて、「プロになりたてで将棋の内容が粗削りだし、対局している姿もつらそうなので、二重の意味で大丈夫かなと思った」と回顧。しかし、「指す将棋がとんでもなく冴えた切れ味」だったそうで、「その二面性が棋士の中でも異質のタイプと思いました」と振り返った。

 その後交流を持った羽生は、関西遠征時には村山さん行きつけの食堂に連れて行ってもらったりしたとか。「村山さんは対局の時は険しい感じだけど、日常は気さくな人」と明かすと、「村山さんは高倉健さん(主演)の(映画)『網走番外地』が好きで、網走に行くとなぜか村山さんを思い出す」と笑みをこぼす場面もあった。

 また、村山さんが大阪から東京に拠点を移したことに話が及ぶと、「関西にいた時も楽しそうだったけど、東京でも違う空気で生活をエンジョイしていたのかな」と思いを馳せる羽生。すると大崎は「彼が東京に行った理由は、『羽生さんと一緒の空気を吸いたい』から」と告白。知られざる事実に、羽生は「本当ですか?」と目を丸くしていた。

 さらに、村山さんが棋士生活で最後に負けた対局について、羽生は「9割方(自分が)負けていたが、最後に信じられないポカが出て、村山さんとしてはかなり残念な一局だった」としみじみ。自分が負かされたある一局については、「(村山さんの)手の動きが印象的で今でも覚えている。村山さんらしい大胆で力強いところが表れていた」とも語った。

 村山さんが人生最後に会った棋士も羽生。村山さんが病が重くなり故郷・広島に戻った時にイベント登壇で来県した羽生に会いたいがため、父親にせがんで連れて行ってもらったとか。羽生は、「最後になるとは夢にも思わなかった」と言いつつ、「ひょっこり現れて気づいたら去っている」イメージを持っていると急逝した村山さんに思いを巡らせた。(取材/錦怜那)

映画『聖の青春』は11月19日より全国公開