芸能界で活躍したのち、32歳の時に当時最年少で参議院議員となり、女性では最多の当選7回を誇る山東昭子さん。今では政治家として知られているが、10代の頃から女優や司会者、ナレーターとして活動してきた。ラジオからスタートし、声優としてならした“声”は、その後の政治活動にも生かされているという。そんな山東さんに、声優時代を聞いた。(取材・文:岩崎郁子)

■ドタバタの“ナマ”吹き替え

 11歳の時、ラジオの子ども番組で司会を務め、芸能界入りした山東さん。15歳の時には吉永小百合さんらも出演したラジオドラマ「赤銅鈴之助」の語り手として人気を博した。その後、女優として映画、テレビドラマなどに出演する一方、外国映画やドラマの吹き替えでも引っ張りだこに。当時は、テレビも吹き替えも草創期。テレビが生放送だった頃は、「開局当初の日本テレビで、野球中継が終わるまで、みんなで待っていたりしましたね」「生放送で緊張すると頻繁にトイレに行きたくなる人がいて、途中で帰って来なくて他の人が声を似せて代わりにやったり……」などと、ドタバタのエピソードが次々と飛び出した。

■「スパイ大作戦」に「女刑事ペパー」…ハリウッドで撮影見学も

 「映画でも年上の役をやっていたり、もともとラジオ出身なのもあり、普通の人よりは幅広い声を出すことに自信はありました」という山東さん。ミステリアスで、どこか色っぽい声がハマった米ドラマ「スパイ大作戦」のシナモン・カーター(バーバラ・ベイン)のほか、「女刑事ペパー」のペパー・アンダーソン(アンジー・ディキンソン)などが当たり役として挙げられる。「ペパー(アンジー)本人とも会いましたよ。ハリウッドに行って、撮影を見たり、一緒に食事をしたり、おもしろい経験をしました。でもね、シナモン(バーバラ)なんて、私に断りなしに降板しちゃって(笑)。“失業”したことも度々ありましたよ」とほがらかに述懐する。当時の声優たちについて、「新劇の俳優さんも多く、演技力はすごくありましたね。(声をアテる)俳優のイメージを壊さないようにしながら、工夫して自分なりの個性を作っていました。みなさん自負心を持って技を磨いていたから重厚で、(声だけで)もったいないな、という感じもしました」と振り返る。

■政界で声の経験が生きるのは?

 テレビ番組「クイズタイムショック」で5週連続勝ち抜きを果たし、“クイズの女王”の異名もとったが、32歳の時、故・田中角栄氏に誘われて政治の世界へ。以後、大臣も経験するなど活躍の舞台は政界に移ったが、政治の世界でも、“声の商売”の経験を生かす場面はあったという。「政治家にとって声は非常に重要なポイントなんです。同じ演説でも、街頭で人の足を止める声と、屋内の講演で語りかける声とでは違う。男社会の政治の世界で、女性が主張した時に男性に反感を持たれないためのテクニックとして声の調子とかもあります。声でいろいろと演じてきたことが、今の仕事にも非常にプラスになっていますね」と利点を語る。また、それまで縁がなかった政治という世界に飛び込む前には、角栄氏から「(何の分野でも)最初からプロという人はいない。だから若いうちからやらないとダメだ」と言われたという。それだけに若者に対しても「何事も『これでいい』と思わないこと。あまり出世しなくていいとか、給料分だけ働けばいいとかでは、日本の発展につながらない」とエールを送る。

■安倍首相が吹き替えしたら!?政界の“声がいい人”

 最後に、政界で“声がいい人物”を聞くと、「小泉進次郎くんとかいいですね。石原伸晃さんも声は……“声は”非常にいい。ほかの党では、共産党の小池(晃)さんとかもね。安倍(晋三)首相が吹き替えしたら? う〜ん、舌がね(舌足らずな話し方なので)……」と茶目っ気たっぷりに明かした。

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山東昭子プロフィール

1942年生まれ。東京都出身。参議院議員。11歳で芸能界入りし、15歳の時、ラジオドラマ「赤胴鈴之助」でナレーターを務める。ラジオや映画、テレビなどで女優、司会者として活躍。女優としての出演作は100本以上。声優としては、米テレビドラマ「スパイ大作戦」や「鬼警部アイアンサイド」「女刑事ペパー」で吹き替えを務めた。1974年に、初当選し政界に進出。1990年には日本で史上6人目の女性大臣に就任した。