17日、第28回高松宮殿下記念世界文化賞受賞者による記者会見および個別懇談会が都内で行われ、演劇・映像部門を受賞したマーティン・スコセッシ監督が出席した。アカデミー賞監督賞や作品賞など、数々の受賞歴があるスコセッシ監督だが「日本文化からインスピレーションを受けたことはたくさんあります。そんな日本で顕彰されることは生涯の業績になります」と感無量な面持ちで語った。

 高松宮殿下記念世界文化賞は、高松宮殿下の「世界の文化・芸術の普及・向上に広く寄与したい」とのご遺志にもとづいて、全世界の芸術家を対象にした顕彰制度。「私たち全人類の財産である芸術の創造者たちに感謝と敬意を捧げ、永遠に讃える」ことを基本理念とし、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇/映像の各部門で優れた業績を上げた芸術家に授与される。

 スコセッシ監督は「13〜14歳のころにニューヨークで観た溝口健二監督の『雨月物語』や黒澤明監督の『生きる』など日本映画や演劇に多くのインスピレーションを受けました。日本の文化や風景には多くの意味があります。日本はわたしを豊かにしてくれるんです」と日本という国への特別な思いを語る。

 さらにスコセッシ監督最新作となる遠藤周作の小説「沈黙」を原作とした映画『沈黙 −サイレンス−』(2017年日本公開予定)について、「27年以上前から構想があった作品。2009年に長崎の外海に行って『遠藤周作文学館』を見学したり、現地のカトリック教徒からの話などを聞き、彼らの力強さと犠牲心、信仰心などを感じました」と裏話を明かした。

 また、1990年には尊敬してやまないという黒澤明監督の『夢』にヴァン・ゴッホ役として出演したことに触れると「フランシス(・フォード・コッポラ)が黒澤監督に僕を紹介したらしく、黒澤監督から『映画に出てくれないか』という長い手紙が届いたんです。当時僕は『グッドフェローズ』の撮影が15日も遅れていて、黒澤さんの『夢』は完了状態でわたし待ちのような状態でね。東京に到着して、網走まで飛んでいくというスケジュールの中、台風に見舞われて」と大変な撮影だったことを懐かしそうに振り返っていた。

 その他、先日ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの魅力や、デジタル全盛の映画界においてもフィルムへこだわる理由、これからの若いクリエイターに対する熱い思いなど、73歳にして未来を見つめる巨匠の話は尽きなかった。(磯部正和)