第60回ロンドン映画祭で映画『ゼア・ファイネスト(原題) / Their Finest』の会見が行われ、『アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜』などのビル・ナイシェイクスピア劇をやらない意外な理由を明かした。

 リサ・エヴァンスの小説「Their Finest Hour and a Half」を基にした本作の主人公は、第二次世界大戦中、英国政府のプロパガンダ映画制作脚本部署で仕事を得た女性(ジェマ・アータートン)。悲劇も起こるが、人生への肯定感に満ちた明るさがベースのロマンチックコメディーになっている。

 ジェマと『世界一キライなあなたに』のサム・クラフリン演じる脚本家同士のロマンスがメインだが、コメディー部分を担っているのがビル演じる俳優だ。昔風の2枚目俳優が盛りを過ぎたにもかかわらず、自分ではまだイケてるつもりなのが笑いを誘う。ビルは「製作陣は自意識過剰なまま長年やってきた俳優を演じられる人物を探していて、僕というわけさ」と自虐して会場を沸かせた。

 また自身について「ロイヤル・シェイクスピア・シアターでは演じていないし、僕の履歴書には古典が欠けている。あのタイプのトラウザーはお断りだ。きちんと長さのあるスーツを着るんじゃなきゃ嫌だよ」と語り、ダンディーで知られるビルがブルマにタイツのようなシェイクスピア劇の衣装をつけた姿を想像させて笑わせた。

 本作は、デンマーク出身のロネ・シェルフィグ監督がイギリスを舞台にした5作目の映画。またもイギリスが舞台となったことについて監督は「イギリスの俳優、物語、建築、ロンドン……この映画を撮ってイギリスの映画史を知ったことでそうしたものをこれまで以上に好きになりましたが、撮った理由は脚本でした。自分が著者と近い感覚になれ、題材に誠実であることができ、何かを表現できると思いました」と明かした。

 代表作『17歳の肖像』と同様、本作でもある時代とその時代に生きる女性が描かれ、フェミニズムの視点を感じさせるが、シェルフィグ監督は自身には女性であることのハンデはなかったと言う。「わたしは本当に恵まれていて、素晴らしい人たちと働いてきました。この人たちを見て! 不満を言う理由など何もないわ」とジェマ、ビルら会見席に並んだイギリス名優たちを指した。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)