47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。佐賀でコロカルが向かったのは、佐賀県の北、福岡県との県境にある山あいの里、佐賀市三瀬村。

高原地・三瀬に、ある日突然現れたカレーの移動販売

海なら糸島、山なら三瀬。昔から佐賀の三瀬は、福岡県民からも、週末のドライブルートとして人気を集めていました。わざわざ他県まで? そうなんです、実は三瀬は佐賀市の中心から北へ車で30分ほどの距離にあり、脊振山地を隔ててすぐお隣の福岡市と接しています。そのため、佐賀市内のみならず、福岡からもドライブで訪れる人々が多いエリアとして知られてきました。

この三瀬村は脊振山地の一帯にあり、「みつせ高原」とも呼ばれています。嘉瀬川が村の中央を通り、その川の先は北山湖へとつながっています。山があり、川があり、湖がある。緑豊かで、のどかなロケーションです。特に夏季は近場の避暑地として広く県内外の人々に愛されています。

絶好のロケーションの中で営業中の〈旅するクーネル〉。

そんな三瀬村で、カレーの移動販売車の姿を見かけるようになったのは2015年のこと。その名も〈旅するクーネル〉。店主・井上よしおさんはかつて福岡市のど真ん中、大名で自然派ワインとイタリアンの店〈食堂クーネル〉を営んでいました。

笑顔がすてきな井上よしおさん。

「その当時、漠然とこのままでいいのかと考えるようになって。店を続けることは、生きていくこと。そう思えば思うほど、大名というまちでの営業に、窮屈さを感じてきました」

そんな井上さんにとってリフレッシュの源になっていたのが旅。時折、長期休暇をとり、海へ、山へ、国内はもちろん、国境を超えて海外にも繰り出したそう。

10年の節目に食堂クーネルの暖簾を下ろし、奥さんと一緒に世界一周、22か国を周る旅に出発。およそ1年かけた旅は、井上さんに大きな価値観の変化をもたらしました。

「自分らしくありたい。そう強く思ったんです。ラクなほうに流れるというと怠惰に聞こえますが、本当にそういう感覚です。食堂クーネルを営んでいた頃は常に追われる生活をしていた気がします。そういうスパイラルから離れようと決めました」

井上さんは帰国後、九州一周の旅に出かけます。その目的は住まいを見つけること。熊本、鹿児島、宮崎と各地を巡り、理想の生活ができる場所を探し求めました。

「世界一周の旅で2か月もの期間を過ごしたパタゴニア。そこでは長い間、夢見てきた生活のかたちがありました。それが循環型の生活です。日本でもそんな生き方ができる土地はないか、自分の目で確かめようと思って」

暇なときは楽器を演奏するという井上さん。そんなゆるやかなスタイルも支持されています。

そんな九州一周の旅を経て、いったん地元・福岡へ戻り、循環型の生活が実践できる農地つきの物件、海が近い山中の家や土地の情報を調べた井上さん。最終的に、偶然見つけたというこの三瀬村で暮らすことになりました。

「近くに有機野菜の生産者がいるんです。同じような考えの方が暮らしているのは心強かったですね。山あいのこのロケーションは、なんだかネパールに似ているかな」

テレビは映らない、湿気がすごい、虫がたくさん出る、冬の寒さが厳しいという環境ではありますが、三瀬村の暮らしは井上さんの肌に合っているようです。

「お金が全然かからないので余計なストレスがありません。何より、人のあたたかさがあります。余った野菜をご近所さんにもらうこともありますし、住人の皆さんに支えてもらっているなと感じています」

こうして暮らしの拠点ができた井上さん。この場所に移ってきたのを機に始めたのが移動式のカレー販売でした。農学校に通っていたときに、興味が湧いたそう。

営業開始前にカレーの仕込みとテント張り。あっという間に心地よい場所が完成します。

「カレーを愛してやまない妻の影響で食べるようになり、すっかりその魅力に夢中になりました。100日連続でカレーを食べ続けたこともありますし、おいしいカレーがつくれるようになりたいという思いからカレーに関する本を読みあさり、おいしいと聞いたお店も積極的に食べ歩きました。勉強のため、インドにも数回通っています。大好きなカレーを通じて、食べた人の健康に寄与できると知って、カレーこそ自分の生きる道だと思いました」

自分自身で有機野菜を育て、それらの野菜を主役にし、スパイスを駆使してカレーに仕上げる。その土台に自身が追求する循環型の暮らしを据えようと考えました。

スパイス料理に挑む旅

旅するクーネルで出しているのはいわゆるスパイス系のカレーです。ただ、辛さ、刺激を追求しているわけではありません。

「スパイスは漢方です。その日の家族の体調に合わせ、スパイスの調合を変えながらカレーをつくるインドの人々をお手本にしています。食べる人のことを思ってスパイスを調合するカレーは、まさに愛情だと思うんです」

井上さんが目指すのは、女性や子ども、年配の人たちにも気軽に食べてもらえるような、そんなひと皿。

「あくまで日常的に食べてもらえるようなカレーです。簡単で、速くつくれるのが理想だと考えています」と井上さんはさわやかな笑顔を見せます。

カレーに使う野菜は現在、井上さんが育てたものがメイン。およそ9割を占めているそうです。

「無農薬、無肥料栽培、炭素資材を利用した炭素循環農法にチャレンジしています。ご近所さんにしいたけの菌床を分けてもらい、それで菌の液をつくり、畑にまきました。害虫が寄ってきませんし、手応えを感じています。とはいえ、なかなか難しいですね。思ったように簡単には育ってくれません」

困ったと言いながらも、目を輝かせる井上さん。今年は借りた畑でゴーヤ、トマト、イモヅル、さつまいも、空芯菜など10種くらい育てているそうで、これらをカレーの材料にしています。

カレーは日替わり1種を提供。3色カレー盛り合わせプレートは800〜1000円で、その時々で使う食材によって価格は変化します。カレーは肉、野菜、そして魚を使うこともあり、その内容は実にバラエティ豊か。食べてみるとスパイスはしっかり主張しますが、辛さだけが突出するわけではなく、香ばしさ、ほろ苦さ、ほのかな酸味といった複雑な味わいが調和していて、実に奥行きを感じる味わい。3色のカレーは単独でもおいしいですが、混ぜることで違う表情を見せてくれ、最後までその変化を楽しむことができます。

「スパイスの栽培も始めたいんですが、風土が合わないようで。いつかスパイスまで自家栽培のカレーを完成させたいですね」

現在、スパイスをもっと日常にとり入れてほしいという思いから、手軽においしいカレーがつくれるスパイスセットを販売しています。そして移動販売という特徴を生かし、現在、拠点としている三瀬を飛び出し、さまざまな場所へ出張カレーに出かける日々です。

「カレーという枠に収まらず、スパイス料理という意識で、もっとその可能性を探っていきたい。そういう思いを込めて、〈三瀬スパイス研究所〉と謳っているんです。これからも自分なりに食と健康と向き合っていきます」

今回飲んだのは、地元の人と一緒につくった〈キリン一番搾り 佐賀づくり〉

「まじめで我慢強い」と言われる佐賀の人。そんな地元の人と地元のことを語り合ってつくられたのが、この〈キリン一番搾り 佐賀づくり〉です。パッケージのイメージカラーは、緑色。さて、その味わいは……。

キリン一番搾り 佐賀づくりってどんなビール? →

福岡工場製造

※本商品は福岡工場での製造ですが、佐賀のお客様と共に佐賀ならではの味わいをつくりあげたため、「佐賀づくり」としています。

問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00〜17:00土日祝除く) ストップ!未成年者飲酒・飲酒運転。のんだあとはリサイクル。

information

旅するクーネル

住所:佐賀県佐賀市三瀬村杠649

営業時間:土日祝のみ 11:00〜なくなり次第終了

*イベント出店のため休みの場合あり。営業日はFB「旅するクーネル」にて最新情報を更新中

writer profile

Yuichiro Yamada

山田祐一郎

やまだ・ゆういちろう●福岡県出身、現在、福津(ふくつ)市在住。日本で唯一(※本人調べ)のヌードル(麺)ライターとして活動中。麺の専門書、全国紙、地元の情報誌などで麺に関する記事を執筆する。著書に『うどんのはなし 福岡』。http://ii-kiji.com/

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撮影:フジモリタイシ(calm-photo)

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