47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。石川でコロカルが向かったのは、奥能登、輪島市にある三井(みい)町。

里山の携帯食を、現代に復活!

どこまでも続いていくような、透明感に満ちた水色の空と川。濃い緑色から黄金色に変わりゆく、里山の林と田んぼ。夏から秋にかけての能登半島は、訪れただけですっきりと心身が掃除されてしまいそうな清々しさがあります。

そんな能登半島の「奥能登」といわれる輪島の里山でビールのアテにぴったりの伝統食があると聞き、訪れました。

待ち合わせ場所は、輪島市の中心地から、車で15分程度のところにある三井町。内陸部に入った700世帯ほどの規模の集落です。

田んぼの真ん中で、炭をおこしているスタンバイ中の人を発見!

「伝統食を食べるなら、バーベキューが一番ですよ!」と現地に住む山本亮さんが珪藻土コンロを準備してくれていました。「さあ、どれにします? どれでもいいですよ」珪藻土コンロは3種類、たくさんの食材とにらめっこして、すべて使用することに決定。なぜこんなにコンロが何種類もあるのかというと、能登半島の先端、珠洲(すず)が天然珪藻土の一大産地だから。だから、ここではバーベキューといえば、珪藻土コンロが登場するのです。

「実際に住んでみてからわかったのですが、ここでは、何か地域のイベントがあると、外で珪藻土コンロを並べてバーベキューするのが定番なんですよね」移住者の山本さんが驚いたローカルの常識。能登では定番という珪藻土コンロで、さて、何を焼く?

円筒形の七輪はよく知られていますが、珪藻土コンロにはいろいろな種類があります。左のものは土を練り上げて成形したもの。右のものは、珪藻土からそのまま塊ごと切り出してきたもの。

炭火が安定したのを確認した山本さんは、クーラーボックスからタッパーを取り出しました。中身は、青なんば(唐辛子)が入ったピリ辛の辛みそ。スプーンですくって薄い木の板に乗せ、じゅうぶんに熱くなった網の上に置きました。網の隣に置かれたサザエは、1、2分ほどでじゅくじゅくと音をたて、もうすぐ食べごろ。そうしているあいだに、熱で少し反った木の板から芳香が漂ってきました。

「アテの木の板の香りがいいでしょう? あ、能登ではヒノキアスナロの木のことをアテって言うんですよ。石川県の県木で、能登半島にはたくさんあります。ほら、目の前にも」

アテは能登ヒバともいわれる、ヒノキ科アスナロ属の常緑針葉樹。このあたりの集落の人たちは、その昔、白飯とみそを山仕事の昼食に携帯していました。昼食時は、伐り倒したアテの端材の上にみそを置き、それを焚き火で焼いてご飯と一緒に食べていたそうです。それが木端(こっぱ)みそ。

珪藻土の遠赤外線効果で、中までじんわりあつあつです。

アテの木と里山を眺めるシチュエーションのなかで、優雅にみそに手をつけてみます。おおお、ピリッと辛く、でも甘い! 左手に持ったビールのグラスはテーブルの上に置かれることなく傾きっぱなし! だ、誰かおかわりを私に〜〜〜。

これが本当の、アテ(の木)でつくったビールのアテ。と、くだらないダジャレが思い浮かぶくらい楽しくなってきてしまいました。

車で15分ほど向こうの海からやってきた海の幸、目の前の山の幸が集まってバーベキューができるなんて、ゴキゲンすぎはしませんか!?

今回は青なんばみそで木端みそをつくりましたが、ふきや山椒、しそ、梅、ゆず、ごまなど季節の里山の恵みを入れたいろんなみそで楽しむことができます。山本さんは、木端みそにするほか、なすの上にのせて舟焼きにしたものが目下のお気に入りとか。

そのほかにはこんな具材も。能登の小木港でとれたいかの口を海洋深層水でボイルした、能登ならではの珍味〈いかとんび串〉。能登スタイルストアなどで購入可能。

それはそうと、能登半島の海沿いのまちに住む何人かに木端みそのことを聞いてみたら知らないという声がほとんどでした。それもそのはず、能登半島は起伏に富んだ里山里海の地。海のそばに住んでいるか、里山に住んでいるかで、食文化や習慣はまったく異なります。

近年、林業が衰退するにつれ、三井町でも木端みそを食べる人が少なくなってきました。地元の若い人たちにとっては、地域の伝統食、木端みそのことは、お年寄りに聞いたことはあるけど食べたことがないという事態になりつつあります。

「ここに木こりという職業があったからこその食文化です。移住する以前から、能登が好きで遊びにくることが多かったのですがそのときに民家の囲炉裏端で木の板の上にふきのとうや山椒のみそがのったものを出してもらったのが記憶に残っていて。そのときにこの食文化がなくなりそうだと聞きました。それならば、ご飯にもお酒にも合うし、この食文化を残すことができればと」

山本さんは、東京農業大学の自然環境保全学研究室に在籍していたとき、夏合宿で初めて三井町を訪れており、昔ながらの生活様式や緑の風景にほれこみいつか移住をしたいと考えていたそうです。大学卒業後は、都内にあるまちづくりコンサルタントの会社に勤務しましたが、2年前に輪島市の地域おこし協力隊が募集されていたのをきっかけに会社を辞め、応募しました。

そういった経緯もあり、移住して早い段階で木端みそを商品化することができたそうです。ところが、そのときはうまくいかなかったとか。

集落の未来に生かす仕組みづくりに励む日々

輪島市で新しい仕事づくりをするために地域おこし協力隊に着任した山本さんは、さっそく、輪島米のブランディングに携わりました。三井町では月に一度「みい里山の市」を開き、出品するものとして木端みその商品化を試みましたが、そのときは地元の人たちからはあまり賛同を得られませんでした。というのは、木端みそは若い方は馴染みがないけれど地元のご高齢の方には当たり前のもので、もっと新しいものを生み出すことを期待されていたから。

以来、山本さんは、ほかのプロジェクトを進めながらも、周囲の理解を求めるために、地域の人たちと交流を深めたり、地元のお母さんたちにみそづくりを学んだりといった地道な努力をしてきました。そして、やっと今夏、地域のみなさんも納得する、大好評のメニューが生まれたとか。

木端みそと豚肉や野菜などの具材を合わせて陶板焼きにすると、蓋を開けたときに香りが広がり、食欲をそそります。「これ、いけるね、ビールにいいねと皆さんが言ってくれて、やっと木端みその魅力や価値を認めてもらえるようになりました」と山本さん。

そのとき、再商品化の可能性を確信しました。アテは、輪島塗の箸にも使われている無活用材を利用。地元の〈谷川醸造〉のみそをベースに、自家製の野菜などを配合してつくっています。

ひと口食べると、豚肉にアテの香りが移ってまるで燻製のよう。しかも、地元のブランド豚、能登豚を使っているのだからおいしくないわけがありません。青なんばのみそと絡んで、ビールが進む、進む。はあ〜、もう1杯!

じゅうじゅうパクパクと音をたて、ビール片手に木端みそのバリエーションを試していく私たち。秋の訪れとともに輪島では、幻の魚、ゲンゲやハタハタ漁が始まります。新鮮な魚と木端みその香ばしいにおいが合わさるとさらにおいしそうなメニューが開発されそうな予感!

昔ながらの三井集落の知恵と、山本さんや移住仲間たちの志に旅人たちの新しい発見も加わって、伝統食「木端みそ」は、進化して未来に継がれていく様子。

五感を刺激する、里山でのバーベキューの差し入れは、もちろんビール。おいしい時間は心地よいと、きっと風が教えてくれる。そんなかけがえのないリラックスタイムを、この秋は、ぜひ能登の里山で体験してください。

今回飲んだのは、地元の人と一緒につくった〈キリン一番搾り 石川づくり〉

「誇り高く、上質なものを求める、本物志向」と言われる石川の人。そんな地元の人と地元のことを語り合ってつくられたのが、この〈キリン一番搾り 石川づくり〉です。パッケージのイメージカラーは金色。さて、その味わいは……。

キリン一番搾り 石川づくりってどんなビール? →

横浜工場製造

※本商品は横浜工場での製造ですが、石川のお客様と共に石川ならではの味わいをつくりあげたため、「石川づくり」としています。

問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00〜17:00土日祝除く) ストップ!未成年者飲酒・飲酒運転。のんだあとはリサイクル。

writer profile

Chizuru Asahina

朝比奈千鶴

あさひな・ちづる●トラベルライター/編集者。富山県出身。エココミュニティや宗教施設、過疎地域などで国籍・文化を超えて人びとが集まって暮らすことに興味を持ち、人の住む標高で営まれる暮らしや心の在り方などに着目した旅行記事を書くことが多い。現在は、エコツーリズムや里山などの取材を中心に国内外のフィールドで活動中。

photographer profile

Tada

ただ

写真家。池田晶紀が主宰する写真事務所〈ゆかい〉に所属。神奈川県横須賀市出身。典型的な郊外居住者として、基地のまちの潮風を浴びてすこやかに育つ。最近は自宅にサウナをつくるべく、DIYに奮闘中。いて座のA型。http://yukaistudio.com/

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