47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。和歌山でコロカルが向かったのは、太平洋に面した田辺湾を望む田辺市。

お殿様の命を受けて誕生した和歌山の名品

熊野詣が盛んだった平安時代中頃には交通の要衝として、江戸時代に入ってからは城下町として栄えた田辺市。外敵の侵入を遅らせるため、T字路を複雑に組み合わせた町割りが現在も残っています。

そんな城下町の名残りを感じる市内でコロカルが訪れたのは、江戸末期の1865年の創業以来、代々家業としてかまぼこづくりを受け継いでいる〈たな梅〉。

縁起のいい、末広型の看板が目印の〈たな梅〉。

地域によって原料となる魚の種類やつくり方が異なるというかまぼこ。「実はかまぼこは、郷土色がすごく強いんですよ」と教えてくれたのは、たな梅の専務取締役の林智香子さん。現在の5代目のお姉さんにあたる方です。

かまぼこと聞いて、半円型に蒸された板付けかまぼこをイメージする人も多いと思います。でも古くから紀州田辺の名産として知られている〈なんば焼〉は、正方形に近い形状。さらに蒸すのではなく、焼いてつくられているのも特徴のひとつ。

こちらが名品の〈なんば焼〉。ひっくり返して焼く際に自然とできる、なんばきび色の丸形焼付も特徴。

「もともとは、ここの本家筋の人がお殿様からの命令を受けてつくるようになったものなんですよ。お土産として江戸まで持って行くにしても生魚だと腐ってしまうので、干物以外で日持ちするものをつくりなさい、と。そこで魚の身をくずした(すり身にした)ものを型に入れて、焼きしめるという製法を考えついたんです」

そんななんば焼の原料は、主に西日本でとれる魚。「エソやグチという魚を使っています。おいしいんですけど小骨が多くて食べにくいので、お魚屋さんには絶対に並ばないですね。30年くらい前まではここでもたくさんとれたのですが、地元の漁師さんの数も減っていることもあって、いまでは瀬戸内海からも仕入れています」と林さん。

実際に使われていた昔のなんば焼の型とヘラ。「もともとはすり身を盛って半面を焼いて、焼けたらひっくり返していたんです。すり身を山型に盛るのも、和歌山のかまぼこの特徴ですね」

仕入れた新鮮な魚がなんば焼となるまでの工程を林さんに尋ねると「まず1匹1匹の鱗をひいて(取って)頭や内臓を除いて3枚におろし、皮をそいで身と分けます。ミンチ状にしたらすり鉢で卵白を加えて粘りを出し、塩・酒・砂糖で調味して、すり身ができあがります。この工程だけでもかなり時間がかかるんですよ」

店舗に併設された工場で焼かれるなんば焼。この日は朝5時半から作業が始まっていたのだそう。

すり身を型に詰めたら、いよいよ焼く工程に。細長い作業場の端から続く機械に型が置かれていきます。「ごく弱火で、蒸し焼きみたいな感じで40分ほどかけて焼き上げるんです」

「とれる魚の量によって変わってくるのですが、1日に焼くのは300枚くらい。お歳暮などの注文をいただく12月は10倍くらい焼きますね。なので、その時期になると朝4時くらいから夜7時まで、ずっと作業しっぱなしになるんですよ」

新鮮な魚を仕入れるからこそつくれる〈ごぼう巻〉

生魚のまま仕入れるエソやグチですが、かまぼこなどに使われるすり身となるのは全体のわずか3〜4割。ムダになってしまう部分を減らそうと誕生したのが、なんば焼と並ぶ紀州田辺の名品である〈ごぼう巻〉。

やわらかくゆでたごぼうを魚のすり身でつなぎ、すり身をつくる際に出た魚皮を巻いて焼きあげるごぼう巻。「これは小さな家業でやっているようなかまぼこ屋でしかつくられていないものです。大手メーカーさんは遠洋でとれた魚を船上で冷凍したものをかまぼこの原料にしているので、魚皮自体がないんです。生の魚を仕入れているからこそ魚皮があり、ごぼう巻をつくれるんですよ」と林さん。

ごぼう巻の作業工程を見学させてもらうと、作業台の上には半日かけてあく抜きをして、2時間ほどゆでられたというごぼうの山が。太い部分を包丁で割り、すり身を塗ってきれいな円筒形に成形される作業がすべて手で行われていました。

「焼いたときに何グラムになるのかを考えながら成形しないといけないし、ごぼうも外側が中にくるよう組まないといけないので、手作業でないとつくれないんですよ」

「成形したら今度は魚皮を1枚ずつ広げて巻き、2時間かけて焼き上げます。焼くときもこまめに転がしたり、魚皮が切れたら魚皮やすり身を加えてくっつける作業があるので、2時間つきっきりに。焼き上がったら秘伝のタレに漬け込んで完成です」

ちなみに広島にもごぼう巻に似たものがあるのだそう。「広島のはかためのごぼうに皮が巻かれているみたいですね。いずれにせよ機械でできる工程がないし、手間がかかって割りが合わないから、ほかの地域ではつくられているのを聞いたことがないですね」

和歌山ならではの食品ということもあり、県が推奨する優良な県産品〈プレミア和歌山〉としても認定されているなんば焼とごぼう巻。さらになんば焼は、平成27年度プレミア和歌山推奨品審査委員特別賞を受賞しています。

「でも梅やミカンに比べると、かまぼこは全国的な知名度がなくて……」と林さん。また後継者不足や流通の変化もあり、廃業してしまう昔ながらのかまぼこ屋さんも少なくないのだそう。

「昔は皆さん地元のかまぼこを買ってくれていたのですが、スーパーマーケットができるようになってからは『地元のかまぼこは高い』と思われてしまい、なかなか。うちの店もいまでは贈答や冠婚葬祭用に買われるお客さんが多いです」と林さん。「もうちょっといろいろな方に和歌山のかまぼこを知っていただけるとうれしいですね」

なんば焼とごぼう巻はお取り寄せもできますが、中には店頭だけで販売されている製品も。そのひとつが、すり身を油で揚げた定番の〈ひら天〉です。

直径12センチほどの型を使い、ひとつずつ手で成形されるひら天。「機械成形されたものよりも厚みがでて、歯ごたえがあっておいしいですよ」と聞いては、こちらも食べずにはいられません。 なんば焼とごぼう巻、そして朝に揚げられたばかりのひら天をいただき、海岸へと向かいました。

田辺湾を眺めながら、まずはなんば焼とごぼう巻をいただきます。わさび醤油で食べるのがおすすめというなんば焼ですが、そのままでも十分なおいしさ。臭みがまったくない上品な味わいと、蒸しかまぼことは違うやわらかな食感に魅了され、ついつい手が止まらなくなってしまいます。

続いていただいたごぼう巻は、魚の旨みが凝縮された魚皮とすり身、旨みを引きたてる甘辛いタレ、そして程よい歯ごたえのごぼうが三位一体となったおいしさ! ビールとの相性のよさは、語るまでもありません。

さらに揚げたてのひら天をひと口いただくと、プリッとした食感に、ほんのりとした塩味が何ともたまらない味わい。ひと口に「練り物」といっても、ひとつひとつ、ここまで違うおいしさがあるのか……と、感動に近いものを覚えてしまいました。

お店で売られているものを目にするだけでは、なかなかその手間がわからないかまぼこですが、こんなにも手間ひまかけて丁寧につくられていることを知ったあとでは、そのおいしさが違います。魚のおいしいところに、おいしいかまぼこあり。紀州田辺を訪れた際には、ぜひ海辺でかまぼことビール、お試しあれ。

今回飲んだのは、地元の人と一緒につくった〈キリン一番搾り 和歌山づくり〉

「おおらかで、好奇心旺盛」と言われる和歌山の人。そんな地元の人と地元のことを語り合ってつくられたのが、この〈キリン一番搾り 和歌山づくり〉です。パッケージのイメージカラーは、和歌山の美しい海を思わせる青色。さて、その味わいは……。

キリン一番搾り 和歌山づくりってどんなビール? →

神戸工場製造

※本商品は神戸工場での製造ですが、和歌山のお客様と共に和歌山ならではの味わいをつくりあげたため、「和歌山づくり」としています。

問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00〜17:00土日祝除く) ストップ!未成年者飲酒・飲酒運転。のんだあとはリサイクル。

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たな梅

住所:和歌山県田辺市福路町39

TEL:0739-22-5204

営業時間:8:00〜17:30(8月は〜18:00)

定休日:無休

http://www.tanaume.jp/

information

プレミア和歌山

和歌山県HP

writer profile

Miki Hayashi

林みき

はやし・みき●フリーランスのライター/エディター。東京都生まれ、幼年期をアメリカで過ごす。女性向けファッション・カルチャー誌の編集を創刊から7年間手がけた後、フリーランスに。生粋の食いしん坊のせいか、飲料メーカーや食に関連した仕事を受けることが多い。『コロカル商店』では主に甘いものを担当。

photographer proflie

Tetsuka Tsurusaki

津留崎徹花

つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。東京での仕事を続けながら、移住先探しの旅に出る日々。自身のコロカルでの連載『美味しいアルバム』では執筆も担当。

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