新鮮な魚におでん、充実の定番おつまみ

灯りがほんのりともる裏路地は、どのまちでも魅力的。スーッと吸い込まれるように迷い込みます。ここ高知の〈おびや町小路〉は、入り組んだ高知55番街から車道を挟んだところ。たった20メートルくらいの短い通り一筋だけに数軒の飲み屋さんが並びます。袋小路のように見えるのですが、左に曲がればホテルの脇を抜けてアーケードの商店街へ。子どもの頃、近所の家と家の隙間や空き地を抜けて秘密のルートを見つけたときのような感覚です。

瓦屋根に格子窓、縄のれんに白い提灯、この〈たに志〉の外観セットは酒場の上品な四つ揃えの外観と言いましょうか。看板には、お茶漬けの店とありますが、ガラガラと引き戸を引いて店内に入ると、お茶漬け前のメニューが豊富。木札、黒板、ホワイトボード、額入りの色紙においしそうなおしながきが並びます。内装も民芸調で落ち着いた雰囲気。

カウンター席に腰掛ければ地元の常連さんが陽気に一杯、とやって来ます。大皿に乗った煮物などのお惣菜的な品々。女将さんと息子の大ちゃんで切り盛りする、家庭料理のお店と書かれた看板に偽りなし。毎日来ても飽きないのは、普段着的な定番おつまみが充実してるから。高知は魚も野菜もおいしいところ。新鮮なお魚の刺身も日替わりで。カツオのたたき。ウツボの唐揚げなんていう高知ならではのおいしい一品で旅気分もあがります。

酒場ではおなじみのおでんもその土地や店の特徴が出るメニュー。カウンターの端っこに置かれたたに志のおでん鍋。湯気の下で煮込まれる細長い赤いかまぼこは、このお店で初めて食べたおでん種。

軽く炙った丸干しやみりん干しをかじりながらいただくのは日本酒。南国は焼酎かと思いきや、高知は日本酒。今年、たに志は開店して50年だそうで、常連客でもある〈濱川酒造〉が「たに志50周年 美丈夫ボトル」をつくって置いてあるというので1本頼んで、美しいブルーボトルからお猪口に注いでふぅ〜。すっきりとした喉ごしで飲みやすい。料理とも合う合う、もう一杯!!!

見渡せば、カウンターもいっぱい。4人掛けテーブルもいっぱい。渋いお店なのに若い男女のグループのお客さんから、2階のお座敷には、団体のお客さんも。高知の人は、お酒にお強い! 着物に割烹着姿の女将さんもお給仕に大忙し、大ちゃんもカウンターの中で休みなしに手を動かしつつ、やさしい笑顔でこのお店は回っています。

information

たに志

住所:高知県高知市帯屋町1-9-19

TEL:088-824-2276

営業時間:18:30〜翌2:30

定休日:日曜・祝日

text & illustration

kao.ri hirao

平尾 香

ひらお・かおり●イラストレーター。神戸生まれ、独自の個性を発揮した作風で、世界的ベストセラー「アルケミスト」を始めとする書籍のカバーや、雑誌の挿絵、広告などで活躍。個展も多数開催。現在は、逗子の小山にアトリエを構え、本人の取材やエッセイなど活躍の幅は広い。著書本に「たちのみ散歩」(情報センター出版局)「ソバのみ散歩」(エイ出版社)www.kao-hirao.comwww.facebook.com/Kao.0408.hirao