西和賀にんげん図鑑Vol.3 〈母ちゃんの店 わがや〉

山菜、そば、きのこ、寒干し大根……。町内にはこれら西和賀ならではの味を楽しめる店がいくつかあり、〈母ちゃんの店わがや〉もその一軒だ。驚くことに、この店は1年間に町の人口と同じ約6000人もの客が訪れる。しかも、12月から3月の冬季は休業なのに、である。

同店が町内北部の沢内貝沢地区にオープンしたのは2009年4月。カタクリの群生地そばに建つ店舗は築100年以上の古民家で、太い梁や柱、壁に飾られた民具、野の花の生け花など郷愁感あふれる。店名のとおり、自分の家に帰ってきたような、ゆったりくつろげる空間だ。

店内の一画では、地域のお母さんたちがつくった編み細工を展示販売している。

この雰囲気と並ぶ、同店のもうひとつの魅力が、料理。町内産そば粉100%の十割そばと、やはり町内産の食材を使った煮しめや、季節の天ぷらなどの郷土料理が自慢で、「添加物を使わない」「できるだけつくりたてで提供する」ことにこだわる。

〈わがや〉を運営するのは生活研究グループ〈ちゃい夢の会〉で、メンバーは佐々木美代子さん、児玉美穂子さん、児玉たえ子さんの3人の母ちゃんたち。

2001年に地場産品の加工場を開設し、自分たちが田畑でつくった食材をのしもちや南蛮みそ、炊き込み山菜ご飯の素などに加工していたが、地域のイベントを機に、この古民家を借りて農家レストランとして営業を始めた。「加工品づくりも、店の料理づくりも、私たちにとっては同じ。先人の知恵や『生活を大切にする心』を伝えたい、という想いでやっています」と話す会長の佐々木さんは、岩手県が認定する「食の匠」(*1)でもある。

西和賀町の先人の知恵を代表するものが、保存食だ。山菜などの塩蔵品、冬の屋外に干して冷凍・解凍を繰り返してつくる凍み(しみ)大根(寒干し大根)、凍み豆腐……。「山菜などの保存は、塩蔵が一番。本来の味や食感、見た目をもっとも良く保つことができます。ポイントは、採れたてをすぐに使うこと。その点、私たちは自分たちの畑でつくった食材を使っているので、より質の良い加工品をつくることができるんです」また、凍み大根・凍み豆腐は冬の寒暖差を利用してつくるものだが、西和賀は特に寒暖差が大きいので食材の甘みが際立つという。

さらに、西和賀の豪雪も食材の魅力につながっている。例えば特産品の〈西わらび〉は、冬の豪雪によって土や根が守られ、春の豊富な雪解け水によって短期間に成長するため、独特のやわらかさや粘りが生まれるといわれる。つまり西和賀の食は、西和賀の冬の風土や「雪の力」によって育まれているのだ。

これら滋味豊かな西和賀の食は、2月に開催される〈ユキノチカラツアー〉でも楽しめる。雪に触れながら、ぜひこの機会に味わってほしい。ツアーについての詳細、応募はこちら。 http://travel-link.jp/archives/7004

information

母の店 わがや

住所:岩手県和賀郡西和賀町沢内川舟3-647-1

TEL:0197-85-5320

定休日:冬期休業(12月〜3月)

ちゃい夢の会

1996年に結成。2001年に工房を設立し、会員が栽培する農作物など地場産品を使った加工品の製造・販売をしている。〈わがや〉が立地する一帯は西和賀のなかでも特に寒さが厳しい地域なので、12〜3月は同店を休業。その間、加工品の製造に力を入れている。

◎あなたにとって「ユキノチカラ」とは?

西和賀ならではのおいしい食材を育むもの。

information

〈ユキノチカラツアー〉参加者募集中!

この冬、西和賀では、〈ユキノチカラツアー〉と題して、〈雪あかり〉の灯、スノートレッキング、温かい郷土料理、砂ゆっこなどを体験できるツアーを開催します。

ツアーについての詳細、応募はこちらをご覧ください。

editor's profile

Tamaki Akasaka

赤坂 環

あかさか・たまき●フリーライター。岩手県盛岡市在住。「食」分野を中心に、県内各地を取材・原稿執筆。各種冊子・パンフレットの企画・構成・編集も行うほか、〈まちの編集室〉メンバーとして雑誌『てくり』なども発行。岩手県食文化研究会会員。

credit

撮影:奥山淳志