羽海野チカの人気漫画を、新房昭之監督とシャフト制作によってTVアニメ化する『3月のライオン』。実写映画化も決定している話題作に、桐山零役の河西健吾と、二海堂晴信役の岡本信彦はどのような意気込みで臨んだのか。また30代という年齢にどのように向き合っているのかまで、語り合ってもらった。

 本作は、深い孤独を負う17歳のプロの将棋棋士・零が、同じ下町に住む3姉妹や数々の対局を通して、成長していく物語。零役に大抜擢となった河西は「プレッシャーがないとは言わない」と打ち明けつつも、「そこまで緊張していないんです。共演者の方も他の現場でお会いした方ばかりですし、みなさん本当に『3月のライオン』が好きな方ばかり。アットホームな雰囲気で、和気藹々と進めています」と笑顔を見せる。

 一方の岡本はというと、「僕は気負いがあって」と苦笑い。というのも岡本は小さな頃から将棋に親しみ、「生業にできたら」と思ったこともあるほどの腕前。以前から原作も読み込んでいた。「オーディションが行われる時には、いろんな声優仲間から“このアクセントを知りたい”など相談をたくさん受けたんです。その時点で、頑張らなきゃと早くもプレッシャーに感じてしまって。二海堂役に決まってからも、僕が貢献できることはなんだろうと思ったり、制作者サイドの思いで、勝手に使命感を感じていました(笑)」。

 劇中では、ライバルであり、心の友である零と二海堂。演じるふたりはどんな刺激を受け合っているのだろうか?岡本は「僕は、河西くんの一本筋の通った負けん気の強さみたいなものが、すごく好きなんです。お芝居に関しては、感情を届けるタイプの役者さん。零くんって、寂しさや虚無感から生まれるある種の負けん気の強さもあるキャラクター。その複雑な感情は、河西くんだからこそ表現できると思います。本当に零役にぴったり」と河西の演技を絶賛する。

 河西は「声優というのは、役に決まるのは一人という世界。そこで外されると、どうして自分じゃなかったんだろうとどうしても考えてしまいます。ライバルとして周囲を見てしまう時もあるので、それが負けん気になっているのかもしれません」とシビアな世界で生きる心境を吐露。「脚本を読んだ時に、岡本くんと二海堂のイメージがかけ離れていたので、どうやるんだろうと思っていたんです。そうしたら、ビタッと見事に二海堂になっていた。他の現場でもいろいろな役をやっているのを見ますが、必ずそこに“生きている”と思わせる演技をする」と熱くリスペクトし合って、作品に挑んでいた。

 確かな信頼感で結ばれた彼らは、同世代の間柄。声優業に励む上で、お互いに30代という年齢を充実とともに迎えている。河西は「僕はあまり人と触れ合うのが上手な方ではないのですが、作品を重ねるごとに話をできる方が増えていくのがすごく楽しいです。作品づくりという同じ方向に向かっていることで、いろいろな話をできることもある。そういった出会いが今の僕を支えてくれています」とキャリアを重ねて、出会いの大切さを実感しているという。

 岡本もこの10月で30歳になる。「20代後半から33歳くらいまでは、役者としても男として脂が乗るから楽しいぞと、先輩方に言われてきました。今、本当にそうだなと思っていて。台本の読み方も変わってきました。このキャラクターが伝えたいことはなんだろうという選択肢が増えてきたり、以前は読み取れなかったことが見えてきたりと、自分の能力値が上がっている感じがするのが楽しくて。一つ一つの作品と向き合ってきたことが、力になっている感じがすごくしているんです」と目を輝かせる。「でももう一つ先輩から言われているのが、35歳を過ぎると、能力値は上がっても体のステータスが下がっていくと(笑)。とにかく頑張るしかないですね!」。(取材・文・写真:成田おり枝)

 『3月のライオン』はNHK総合にて毎週土曜日23時より放送中。