早期乳がんでは、術後に抗がん剤治療が行われる。

 超早期でない限り必要な治療だが、吐き気や極度の疲労感、脱毛など女性にはつらい副作用もあり、できれば避けたいのが本音。

 近年は遺伝子検査で「再発リスク」を調べ、結果次第で術後の抗がん剤治療を省略する動きもある。

 先日、乳がんの再発リスクを反映する70遺伝子の活動状態を調べる「マンマプリント」でリスクを評価し、抗がん剤治療の要・不要を検討した「MINDACT試験」の結果が報告された。

 同試験は、EU(欧州連合)の公的研究開発支援制度の助成を受けた大規模なもの。2007〜11年にEU9カ国、112施設で患者登録が行われた。

 対象は18〜70歳の女性。乳がんのステージ(病期)は、しこりの大きさが5センチメートル以下でリンパ節への転移がないステージ1〜2a期、もしくは転移があっても手術ができる2b期だった。

 再発リスクの判定には、組織型のほか、年齢やしこりの大きさ、リンパ節転移の有無から推測される「臨床リスク」と、マンマプリントで評価する「遺伝子リスク」の双方を利用している。

 登録者6693人中、両方のリスクが低い群は41%、臨床リスクは低いが、遺伝子リスクが高い群が8.8%、高臨床リスク・低遺伝子リスク群が23.2%、両方とも高リスクの群は27.0%だった。

 このうち、高臨床リスク・低遺伝子リスク群について、術後の抗がん剤治療を受ける群と受けない群にわけ、5年後の再発率と生存率を比較検討した。その結果、5年後の再発率と生存率には有意差がつかなかったのである。

 つまり、臨床的に再発リスクが高いように見えても、遺伝子リスクが低い場合、術後の抗がん剤治療を省略できる可能性が示されたのだ。研究者は、臨床リスクが高いと判定された患者の4割以上は、術後の抗がん剤治療を回避できるかもしれないとしている。

 マンマプリントは日本でも受けられるが、消費税込みで50万円以上と高額。新薬の承認もいいけれど、過剰診療を防ぐ手段にこそ保険適用を考慮してほしい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)