この夏、「たばこ白書(厚生労働省)」が改訂された。喫煙、受動喫煙と疾患との因果関係を「確実」〜「無関係の可能性」の4段階で評価した点が特徴。

 本人の喫煙と疾患との因果関係が証明されている「がん(肺・咽頭・食道など)」は「確実」。これまで「可能性あり」だった「脳卒中」「心筋梗塞」「糖尿病」も、「確実」に危険度が上がった。

 受動喫煙の影響に関しても手厳しい。「受動喫煙関連の年間死亡者数は1万5000人と推定される」という国立がん研究センターのデータを引いて、日本の受動喫煙対策は「世界でも最低」と断じ、屋内の100%禁煙化を推進すべきだと提言している。

 ちなみに、受動喫煙による推計死亡者数は、毎年1万人以上が亡くなった1960年代の年間交通事故死亡者数に匹敵する。

 当時は、前回の東京オリンピックを3年後に控えた61年から読売新聞が「日清戦争より多い死者」という刺激的なタイトルで、交通事故の現実を取材した連載「交通戦争」をスタート。欧米の事例から対策の必要を論じた。

 世論の盛り上がりを背景に、道路交通法の改定や取り締まり強化が行われ、安全面の技術革新もあって交通事故死は減少していく。2015年の交通事故死は、4117人。70年に記録した最大1万6765人の4分の1以下だ。

 受動喫煙関連死については、推計値に疑問の声がある一方、直接死ではない点が重大性を見えにくくしている。ただ、死亡者数の多さは侮れない。20年に向け、何らかの法整備はありそうだ。

 受動喫煙との因果関係が確実とされる疾患は、「肺がん」「脳卒中」「心筋梗塞」「乳幼児突然死症候群(SIDS)」がある。両親とも喫煙者でのSIDS発症リスクは、非喫煙夫婦の約5倍。母親の受動喫煙だけで2〜3倍に上昇する。

 妊娠の報告と同時に禁煙を迫られる人は少なくないだろう。分煙で勘弁して欲しいかもしれないが、喫煙者の身体に付着した残留物が屋内で再び放散される「サードハンドスモーキング」のリスクも侮れない。自分と子供の将来のために、禁煙したほうがいい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)