問題のパッケージ / (C)Hosang You

 旅先での楽しみのひとつが食事。特産に舌鼓を打ち、甘いスイーツとの出会いにほほを緩める至福の時だ。

 しかし、未知というのは怖いもの。いたずら好きの女神に、旅の達人もすっかり騙されたという。

■勇気を持って珍味に挑むも限界が…

 台北市内のあちこちを案内してくれた、台湾の友達である、チェンとパティが立ち止まったのは、ミルクティーを売っている、雰囲気のある屋台だった。彼女たちは、笑みを浮かべつつ話しかけてきた。

「ここではコレを、必ず食べないと!」

 彼女たちの説明によると、台北ではカエルの卵を入れたスイーツが一番人気だという。

「えっ? カエルの卵???」

 一瞬ドキッとしたが、経験することは一番の美徳だ、と常々思っている私ではないか! そうだ、食わず嫌いはやめよう。しかし、何が何でもカエルの卵はちょっと…

「少し味わうくらいでいいよー」という私の“弱気な”提案を、チェンはきっぱり断り、3杯買って1つずつを手渡しした。


台北の中心街 / (C)Hosang You

 太いストローでひと口ちょびっと吸ってみると、ぬるぬるした黒い固まりが、ずるずると上がってくる。げっ…そうでなくても味気のしないミルクティーに、なんてことをするんだ…。

 正直、すぐさま投げ捨てたかったが、彼女たちの気持ちを考えると、ちょっとずつでも飲むしかなかった。結局は半分すら飲めず、飲みほずなんて到底耐えられない。ストローをくわえて飲むふりを時々しながら、彼女たちがよそ見して気を取られている隙に、近くにあった大きなゴミ箱へこっそり捨て、“証拠隠滅”に成功した。


台北の夜市 / (C)Hosang You

 翌日、夜市へ行ったとき、彼女たちはまた、カエルの卵のミルクティーを飲もうというのだ。今回は、きっぱり断らずにはいられなかった。

「もうこれ以上は食べられないよ!」(他に食べるものがなくて、またカエルの卵を食べようというのか? というニュアンスで…)

 私の真剣な顔つきに、完全に笑い崩れる二人。そして言われたのはこんな一言だった。

「あれ本物じゃないよ!」

 あれれ? そうだったのだ。あの黒い固まりはタピオカで作られたでんぷんの固まりだったのだ。韓国では“タピオカティー”がまだ流行していなかった頃だった。台湾では、このタピオカの固まりを面白半分で『カエルの卵』と呼ぶそうだ。語感も悪いのに、なぜそのように呼んでいるのだろう?

Taipei, Taiwan


Illustration (C)Hosang You

[旅の達人情報]

 南アメリカが原産地のカサバ(Cassava)。その根っこから得たでんぷんを3〜5mmの固まりに作ったのが、あのタピオカのパール(Tapioka Pearl)だ。そしてそれを入れたミルクティーが1980年代に台湾で登場した飲み物、タピオカティーだ。

 一方、イギリスの著名な生物学者である、リチャード・ド―キンス(Richard Dawkins)は、“何にでも常に疑問を持つ習慣”を強調した。これは必ずしも特定な分野だけに適用される言葉ではないだろう。

取材・文/劉昊相(YOU HOSANG)

韓国出身。見知らぬ場所や文化を楽しむ、生まれついての旅行家。イギリス在住時に様々なプロジェクトを経験、Panasonicなど多国的企業での海外業務経験を持ち、英語、日本語、韓国語に通じる。旅行 コミュニティー「Club Terranova」を運営。