組織力と商品力−−これまでセブンの強さの舞台裏を探ってきたが、強さの秘密にはもうひとつある。「事件は現場で起きている」のはコンビニ業界でも同じこと。つまり、顧客と直接触れる店舗にも、強さの理由が隠されているのだ。最強セブンの最後の砦、売る力を持つ「現場」で探ってみた。

「店はもっと進化しますよ」

豊洲店・豊洲5丁目店・豊洲3丁目店・ゆりかもめ豊洲駅店・豊洲駅前店オーナー
山本憲司さん

亡き父の酒店を継いだ後、セブン-イレブンの将来性に賭けて加盟。あなたにとってセブンとは? の問いに「私の青春」ときっぱり。

「本当にやりがいのある仕事です」

セブン-イレブン・ジャパン
江東地区 オペレーション・フィールド・カウンセラー
井上弘毅さん

OFC歴8年。「加盟店の方の人生を背負う気概でやっています。一店一店に合った運営を考え、売り上げが伸びた時は素直にうれしいですね」

◆モノを売るための3か条

1.常に前向きに考える

新商品は「売れるかな」ではなく「売れるはず」という発想で仕入れてみよう。後向きだと発注が弱気になり欠品を招く。

2.考えごとは朝一番に

疲れたときはネガティブ思考になるので考えごとは禁物。頭が冴える目覚めの30分間が1日の販売計画を練るチャンスだ。

3.給料の一番高い人が一番働け

パートもアルバイトも上司の態度を見て育つ。自らが行動で示せば一致団結、集客力ある店になること間違いなし。

 今から40年前の1974年5月15日、東京・豊洲に開店した山本憲司さんに、他チェーンより日販が10万〜15万円も高く、「セブンの一人勝ち」といわれる理由をお聞きしました。

「基本を徹底する力、商品力、現場力があるからでしょう」

 基本とは、当時24歳だった山本オーナーが「鈴木敏文会長から教わった」という店舗経営の心構え、「鮮度管理・品揃え・クリンリネス・フレンドリーサービス」の基本4原則のことだ。

「どれもお客様の立場に立って考えれば当然のこと。品質はいいほうがいいし、欲しいものは必ずあってほしい。店は清潔じゃないといやだし、従業員が笑顔で対応してくれると、また来ようという気になるじゃないですか」

 しかし、一見地味なこれら原則を毎日やり続けることはたやすいことではない。社会人なら誰だって「のらない日」がある。

「それを地道に努力してやり遂げるのがセブン−イレブンなんです。やらなきゃ競合に勝てませんよ」

 山本オーナーは、現在5店舗を経営。言葉に説得力がある。

◎売れる店に女房役あり

 商品力とは鎌田氏が話したように「消費意欲をかきたてる価値あるオリジナル商品を作り出す力」、そして現場力とは365日24時間開いている「店舗オペレーション力」のことだ。

 この売り上げに直結する店舗のオぺレーションにこそ、セブンならではの強力な武器がある。毎週店を訪問し、「売れる店づくり」をサポートするOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー=店舗経営相談員)の存在だ。

 普段、気には留めないが、店には日々「売るしかけ」がしてある。天気がいいと思えば冷たい麺類がどっさり仕入れられているし、イチオシ商品は目立つよう目の高さの棚に並んでいる。衝動買いしたくなるようなキャンペーンやセールも話題に事欠かないし、最近は新商品の試食をすすめる店もある。

 こうして地元の消費者のニーズに応じて知恵を出し、攻める商売を突き進むオーナーや店長も、ひとりでやっていると我流に陥ってしまい、商売のマンネリ化を招いてしまう。それを防ぐのが本部の新商品や販促情報を店に届け、親身に経営計画の相談に乗るOFC。いわば経営者の女房役というわけだ。パートやアルバイトの悩みを聞いて士気を上げたり、商品の陳列替えのアイデアを出したり、アドバイスしたり。女房役だけにOFCには世話焼きな人が多い。

[Old]加盟前の酒店時代

[Now]高層マンションが立ち並ぶ現在の豊洲店

昔は沼地だったという豊洲。現在は高層ビルやマンションが立ち並び、転入者も多い。商機は格段に増えた。

◎“売れなさ筋”に注目

 従業員一丸となっての店舗経営、商品本部が送り出す魅力ある商品、OFCからのアドバイス。小さな店の中には勝つ仕組みが揃っているが、40年間走り続ける山本オーナーに繁盛店になる極意を聞くと「売れ筋を置く、死に筋を排除する、これはもう当たり前。本当にお客様から支持を得る店になるには、“売れなさ筋”を欠品(品切れ)させないことです」

 と返ってきた。

 売れなさ筋とは、山本オーナーの造語で、「売れなさそうに見えて、でも毎日何個か売れる商品」という意味だ。

「お客様が一番不満に思うのは、わざわざ行ったのに欲しい品がなかった時なんです。売れ筋はもとより、いつも売れるわけではないがコンビニに必ずあるべき商品まできちんと揃えて初めて、お客様から頼りにされる。完売御礼なんてとんでもない。機会ロス(置いていれば売れたのにという損失)だと心得なければ。商品の発注こそ強い店を作るポイントです」

 商品が売れ残った時と客のニーズに応えられなかった時とどちらが怖いか? 店の将来を思えば、答えは自然と出てくるはずだ。

「創業40周年で、最近セブン−イレブンは変わったか? とよく聞かれますが、店は変わっても本質は変わっていない。世の中の変化に応じてチャレンジあるのみ。これからもそうですよ」

 物販だけでなく、あらゆる「暮らしの便利」に応えられる店に。64歳オーナーのチャレンジは続く。

■昔の発注システム

発注を本部で集約できるように開発された「ターミナルセブン」(1978年)。情報システムのイノベーションの始まりだ。

■現在の発注システム

現在の発注端末「グラフィックオーダーターミナル」。実際に商品を見ながら操作でき、天気予報やイベント情報なども確認できる。

「何か売れたか」「どう売れたか」。店内の陳列を見て、オーナーと売れ方の「検証」をするのもOFCの仕事だ。

バックヤードと呼ばれる店の奥で、売り上げ推移などの結果を見ながら、さらに売れるための「仮説」を立てる。

文/編集部

◎各種のデータは取材時のものです。