抱擁しあう男女のシーンで幕を開ける『ある天文学者の恋文』。『ニュー・シネマ・パラダイス』の名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督が手がけた、大人のラブストーリーだ。

天文学者のエドと恋人のエイミーは、教授と教え子という立場。親子ほど年齢が離れたカップルで、エドには妻子もいるが、2人は天文学に対する探究心を共有し、深く愛し合っている。

ところがある日、エイミーは突然エドの訃報を知らされる。不思議なことに、エイミーのもとにエドからのショートメールが届いたのとほぼ同時に。その後も不思議なことは続き、この世にいないはずのエドから、次々と手紙やメッセージ映像が届き続ける。そこには、深い愛ゆえにエドが仕掛けたある秘密があるのだが――。

さて。筆者の周囲に限ってだが、この映画を試写などで鑑賞した女性たちの反応は賛否両論だ。感想は、ざっくり以下に分類される。

(1)2人の深い愛に震える 
(2)老いた男性の願望でしょ? 
(3)エド、重い 
(4)言うても不倫。エドの妻子が気の毒
こう書くとピュアな愛を認められないアンチが多数みたいに見えるが、(1)派が結構いることも付け加えておく。

ちなみに筆者の感想は(2)と(3)。可愛げがないのは分かっている。でもこの映画、「こんな風に愛されれたい!」と憧れる女性よりも、どちらかというと「老いてもこんな恋がしたい」とぐっとくる男性の方が多いのでは……と思うのだ。

エドを演じるのは、老いてなおセクシーな英国俳優ジェレミー・アイアンズ。エイミーを演じるのは、『007/慰めの報酬』でボンドガールも務めた美貌のウクライナ人女優オルガ・キュリレンコ。例えば、オルガみたいな若い美女が、エドの匂いつきシャツを欲しがり、その上それを素肌に身につけて眠るというシーン。殿方にとっては夢のようではないだろうか(きっと加齢臭も芳しいジェレミーでなければ成り立たないとはいえ)。終始エイミーの目線で語られる映画だが、核になるのは、若くて美しい恋人を残して世を去る老紳士による、「2人の愛を永遠に存続させることができるかどうか」の挑戦。自身も老境に入ったトルナトーレ監督は、エドを通してその可能性を検証しようとしたのだと思う。

今は自分の不在に打ちひしがれるエイミーにも、きっとそのうち新しい恋人ができる。自分はこの世を去っても、彼女に自分を忘れられない何かを残していきたい……。そんな想いで最期の日々に懸命に「仕掛け」を用意したのだと想像すると、「重い」と感じたエドの行動も少し愛おしく思えてくる。

この映画のインタビューでトルナトーレ監督は、「テクノロジーが進化して、私たちは、愛を永遠に存続させるのが可能ではないかという幻想を抱き始めているようだ」と語っている。愛を永遠に存在させることは「幻想」なのかどうか。その試みの結果は、今作のラストシーンを見て想像してほしい。

文=新田理恵/Avanti Press