不倫が致命傷になってしまう現在の芸能界。先日は歌舞伎俳優の中村橋之助も不倫報道について謝罪会見を行いました。浮名も芸の肥やしと言われていた歌舞伎界ですが、そんな風潮は許されなくなってしまったようです。

治外法権だった歌舞伎界

京都の人気芸妓との密会が報じられた中村橋之助は9月14日、都内のホテルで謝罪会見を開きました。襲名披露興行を控える大事な時期だけに「ただただ私の不徳の致すところ」と終始神妙な面持ち。愛妻家のイメージが強かった中村橋之助だけに意外だという声も聞かれました。一方、“女遊びは暗黙の了解”とされてきた歌舞伎界の不倫報道ということで、問題となった事自体に驚く声も上がっています。

歌舞伎界は華の世界。遊女から花魁まで演じることがあり、あるいは彼女たちとの交わりを理解するため、日本独特の色事文化や美学を知ることは修行の一環です。お茶屋での遊びも“粋”であり、誰と寝たなんて話も日常茶飯事。そのため女遊びは“芸の肥やし”として推奨すらされていました。

そんな世界ですから、色恋沙汰や複数の女性との交際も公然の秘密。それどころか市川染五郎、片岡愛之助、市川海老蔵と人気歌舞伎俳優は軒並み隠し子がいることが発覚しており、皆それを認めています。相手の女性とは養育費など大きなトラブルにはなっておらず、そこまで含めて伝統的なルールがあるのでしょう。そして梨園の妻はそれを許すのが当たり前。女優の扇千景が、夫で歌舞伎俳優の坂田藤十郎の派手な女遊びが報じられた際に「彼は常に女の人がいないとだめですから。女にモテない夫なんてつまらない」とコメントしたのは有名です。

どんなケースでも「不倫=悪」という図式ができた

ところがこれが最近は変わってきたようです。「週刊文春」が年明けに報じたゲスの極み乙女。の川谷絵音とベッキーのスキャンダルから始まった空前の不倫報道ブーム。毎週のように誰かしらの不倫が報じられ、誰かしらが謝罪していますが、ベッキー叩きの火が大きくなりすぎて、誰もが“叩く対象としての不倫”を探しているような状態です。それが、ある意味聖域だった歌舞伎界にも飛び火した。

この状況は芸能人にとっても意外だったようで、中村橋之助の件に関してフジテレビ系「とくダネ!」で小倉智昭は「一昔前なら、こういうのはあまりニュースにならなかったりしたけど、今はもうアウトになっちゃうんですよね」とコメント。ナインティナイン岡村隆史は自身のラジオ番組で「歌舞伎って別に女遊びはよかったんちゃうんか?」と話しました。フジテレビ系「バイキング」では雨上がり決死隊の宮迫博之が、妻に「昔やったら、こういう世界の方は芸の肥やしだったり隠し子だったりが当たり前やった」と言った瞬間「時代がちゃうねん!」と一喝されたことを明かしています。

今年6月に不倫が報じられた落語家の三遊亭円楽は会見で「芸の肥やしだとは考えない。痛切に感じたのは、昔は女遊びをしなさいとか師匠方が言ったけど、今の時代そうじゃないということ。芸の肥やしになんてならない」と自ら答えています。不倫や色恋沙汰の是非は当事者にしか決められませんが、報道のされ方や世間の感じ方が変わってきたのは事実。「女遊びは芸の肥やし」というのは、完全に過去のものになったようです。

(文/大木信景@HEW)