比嘉愛未、ミムラ、佐々木希という美人女優たちが三姉妹を熱演している映画『カノン』。本作は、映画『チェスト!』『リトル・マエストラ』で知られる雑賀俊朗(さいがとしろう)監督が、『チェスト!』の脚本家・登坂恵里香と再びタッグを組んだオリジナル作品。死んだはずの母親が生きていたことを知った三姉妹が、母の過去をたどりながら、自分たちの心の傷に向き合っていく姿を繊細に描き出しています。本作で、富山在住の教師である次女・藍を演じた比嘉愛未(ひがまなみ)さんにお話を伺いました。

Q:希望を感じるラスト・シーンが印象を残す一方で、母親からの虐待、夫からのモラハラなど、壮絶なシーンも登場する作品ですが、初めて脚本を読んだとき、どう感じましたか?

読み進めていくうちにどんどん苦しくなって、読むのがつらくなるほどでした。でも、物語のラストでは、未来に対する希望が感じられました。難しい題材ですが、頑張って演じたいと思いました。

Q:比嘉さんは、カットの声がかかった途端に気持ちを切り替えられるタイプですか?

私は不器用で、カットの声がかかってもすぐには自分に戻れないですね。作品を撮り終えた後、しばらく引きずってしまうときもあります。

Q:それでは、本作はかなりつらかったのでは?

つらかったです(笑)。私は自然が大好きなんですけど、富山県で三週間撮影していたときも、役がなかなか抜けなくて。オフの日は観光に行こう!という気持ちにならなかったですね。自分でもあのときの感覚を不思議に思ったほどでした。私は食べることが大好きなので、食事は気分転換に役立ちましたけど。

Q:姉役のミムラさん、妹役の佐々木希さんも同じような状況でしたか?

それぞれ演じ方があると思いますが、おそらく、同じような感覚はあったかと。特に三姉妹の母親役の鈴木保奈美さんは一番つらい役で、現場でほとんど誰ともお話をされていませんでした。富山に入られた時点で、完全に演技の世界に入られていたと思うんです。

Q:保奈美さんが演じた母親は、子どもを虐待し、アルコールに溺れ、やがて認知症を患うという波乱万丈な運命を辿っていきますからね。この熱演は、鬼気迫る女優魂を感じました。

保奈美さんは減量もされていたと思います。私たちも朝はご挨拶をさせていただいたんですが、それ以外はほとんどお話出来なかったですね。そのことによって、保奈美さんの役に対する覚悟がひしひしと伝わってきて、私たちを引っ張って下さいました。劇中、三姉妹が感じる、母親にどう接していいか分からないというリアルな想いは、保奈美さんが作り上げて下さったものなんです。祖母を演じた多岐川裕美さんの凛とした強さも心に残りました。世代の違う女優さんたちがたくさん集まってひとつの作品を作るという経験はこれまでになかったので、すごく貴重な時間だと思いました。良い刺激を受け、勉強になりましたね。

Q:本作で演じた藍と共通点を見出せましたか?

私は家族に恵まれ、好きなお仕事をさせていただいて、楽しく生きているタイプの人間なんです。藍とは共通点がなかったので、自分に寄せるよりも藍という人物を理解したいと思いました。私は長女なので、次女の気持ちを理解するため、きょうだいの真ん中として生まれた方に、いろいろとお話を聞いてみました。私自身、迷いながら演じていたので、出来上がった作品を観るまでは、この演じ方で良かったのかなとずっと思っていました。監督が言うには、それが藍のリアルなんじゃないかと。藍も私と同じように迷いながら母親、そして自分と向き合っていくんです。

難しいことですが、本当の自分を知った瞬間にまたひとつ成長出来るのかなと思いました。この映画はひと言で言い表せない作品ですが、ラストはカノンという音楽の力もあって、スーッと心が軽くなるような感覚を味わえます。本作を観た方が、一歩踏み出す勇気やエネルギーを感じて下さったら嬉しいですね。

映画『カノン』10月1日(土)より、角川シネマ新宿ほかロードショー。
©2016「カノン」製作委員会
配給/KADOKAWA

取材・文/田嶋真理 写真/横村 彰