戦国の世で“天下に並ぶ者なし”の名将として世間から尊敬を集めていた真田幸村(加藤雅也)が、実は偶発的な幸運の連続によって勝ちを拾ってきただけの気弱な“腰抜け男”だった……という大胆な発想から生まれた映画『真田十勇士』。同作はもともと2014年に上演された舞台作品の映画版。“真田イヤー”と言われる今年、映画と舞台を同時期に公開・上演する史上初の試みとして帰ってきました。人気大河ドラマ「真田丸」とはちょっと違うテイストですが、「真田丸」では描けないユニークさが満載の快作です。

映画と舞台で微妙に違うキャスティング

これまで日本人に愛されてきた幸村のイメージがガラガラと音を立てて崩れるダメっぷりと、そんな幸村を“本物の天下一の英雄”に仕立て上げようと発案し“真田十勇士”を集める猿飛佐助の自由すぎる発想がユニークな同映画。中村勘九郎演じる主人公の猿飛佐助や真田幸村などは映画・舞台ともに同一のキャストを起用しているものの、絶妙に違う両者のキャスティングの妙も話題になっています。

舞台で篠田麻里子が演じた“くノ一(女忍者)”の火垂役を、映画では篠田と同じく元AKB48の大島優子が熱演。奇しくも同じ役での元AKB対決が実現しました。幸村との間に“禁断の秘密”を持つ亡き豊臣秀吉の妻・淀殿は舞台では浅野ゆう子、映画では大竹しのぶが演じ、カラーの全く違った淀殿を見せています。また、舞台版で霧隠才蔵を演じていた加藤和樹が、映画版では同じく十勇士のひとりである由利鎌之助を演じているなど、映画・舞台で異なる役を演じている役者がいるのも見所。加藤和樹ファンにはたまりません!

クールな才蔵が舞台では“冷静ナルシスト”

映画では松坂桃李が演じている霧隠才蔵は、松坂本人も出演が決まった際に「とびきりクールでかっこいい、“水もしたたるいい男”霧隠才蔵として、最後まで駆け抜けたいです」とコメントした通り同作一のイケメンポジション。火垂との絡みのシーンではキュン死してしまう女性が続出しているようです。そんなクールビューティな才蔵ですが、舞台版では自ら「女殺し」と言ってしまう少々ナルシストなキャラ。加藤和樹と松坂桃李による、“冷静ナルシスト”対“クールビューティ”という対決も見ものです。

映画版は壮大なスケールかつ笑いたっぷり!

豪華なセットやフライング、プロジェクションマッピングなどダイナミックな演出が盛りだくさんだった舞台版。映画版では、壮大なスケールで繰り広げられるスペクタクルも見所ですが、上映スタートと同時にいきなり観ている人を不安にさせるなど、斬新な笑いが随所に盛り込まれています。幸村のダメっぷりと佐助の適当っぷりの酷さや、火垂の突っ込みどころ満載のツンデレ感、ラストに向けた滅茶苦茶なストーリー展開など、ユーモア要素が全面に。舞台を観た人もそうでない人もこれから観る人も楽しめます。

もちろん、大河「真田丸」で人々を魅了した人間ドラマ、知略の爽快感、ニヤリとしてしまうような微妙なロマンス要素などもあります。“真田イヤー”の本命といわれるだけあるエンタテインメント作品です。

(文/木村彩乃@HEW)