10月15日より公開される三浦大輔監督の『何者』は、5人の大学生の就活事情を描き、それぞれの思いを交錯させてゆく物語。主演の佐藤健はじめ、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之と豪華俳優陣が出演します。特報映像で流れるのは「オレたち 就活するってよ。」と、どこかできいたフレーズ。そう、同作は『桐島、部活やめるってよ』で知られる朝井リョウの直木賞受賞作を映画化したもの。この2作品はまったく別の話ですが、どちらも若者の葛藤を通して、現代の社会構造やそこに生きる人々の苦悩を描き出しています。

異なる〇〇系男女が就活で実像を失っていく『何者』

観察能力が高く、就活仲間をどこか俯瞰で観ている「冷静分析系男子」拓人。拓人が密かに恋心を抱く「地道素直系女子」瑞月に、瑞月の元カレで拓人とルームシェアしている「天真爛漫系男子」光太郎。拓人の部屋の上階に住んでいて就活に意欲的な「意識高い系女子」理香と、理香と同棲中で、就活はしないと宣言する「空想クリエイター系男子」隆良。 5人は理香の部屋を「就活対策本部」として定期的に集まり、情報交換をし合います。しかし互いのSNSでのつぶやきや動向を見つめていくうちに、疑念や嫉妬感情を抱きはじめ、その関係性を歪ませていきます。

小説版はTwitter上の会話文を数多く取り入れているのが特徴的。多くの企業がTwitterやFacebookで情報発信を行なう現代では、就活生がSNSを活用するのはもちろん、彼らの素行を知るために、採用担当者が就活生の書き込みをチェックすることも常識化しています。
 企業にはネガティブな自分を見せられない。いっぽうで、自己顕示が過ぎると「意識高い系」としてほかの就活生から嘲笑される。一体、自分の価値とは何で、自分は「何者」なのか?そんな現代の悩ましい若者の就活事情を描いていて、ネット上では、この小説を読んだリアル就活生からの共感の声がたくさん上がっています。

学内カーストのもと「何者」像が浮かぶ『桐島、部活やめるってよ』

第36回日本アカデミー賞で最優秀作品賞など、数々の国内映画賞を総ナメにした吉田大八監督による映画化作品『桐島、部活やめるってよ』。舞台となるのは、クラスの中心的存在グループと、教室の隅にいるような地味グループ…そんなスクールカーストが存在する田舎の県立高校。
 神木隆之介が演じる前田涼也は、映画部に所属し、クラスで目立たないいわゆる下層カースト的存在。橋本愛演じるかすみに想いを寄せるも、立場上あまり話せません。ある日、バレー部のキャプテンで人気者の桐島が突然部活を辞めていなくなったことで、親友でスポーツ万能の宏樹、彼女である校内一の美少女・梨紗など、周囲の人間は戸惑い、校内ヒエラルキーが崩壊していきます。

同作の登場人物に着目すると、『何者』と呼応する部分が浮かび上がってきます。たとえば、モテキャラの宏樹は何でもできるのに、何をしても楽しさを感じず、『何者』のように今後の進路を見据えては自分の存在意義について悩みます。上層の女子グループにいる実果は、本当は部活が好きでも「内申のためにやっているだけ」と、周囲に合わせて本音を伏せています。熱意をみせればダサくて馬鹿にされる、“意識高い系は嘲笑される”という風潮が『何者』同様に描かれています。

他人が羨む要素をもっていたとしても、人生には不安を抱いてしまう。また、コミュニティに属する限り、暗黙の同調圧力に従ってしまう。──学校や就活を題材に、そんな現代社会に生きるすべての人に通じ得る人間像を描いた朝井リョウの作品。これまで触れたことのなかった人は、ぜひそれぞれの映画版・小説版を通してその世界観を堪能してみてはいかがでしょう。

(文/藤岡千夏@H14)

『何者』
 2016年10月15日(土)全国公開
©2016映画「何者」製作委員会