2016年は映画好きの間で「今年は邦画の当たり年だ」という喜びの声が続々聞かれ、将来も名作としてタイトルが挙げられるような作品が次々に公開されています。ただどうも激しい暴力描写やヘビーな設定など、暗い要素のある作品で傑作が誕生しているような……?

人体破壊描写で度肝を抜いた『アイアムアヒーロー』

“2016年邦画”で“暴力”といえば、まず4月に公開された『アイアムアヒーロー』(監督:佐藤信介)が挙げられるでしょう。大泉洋を主演に、“ZQN”と呼ばれるゾンビのような生命体が広がって感染パニックに陥った日本での極限のサバイバルを描いたホラー映画です。R15+指定はされていましたが、それでも有村架純や長澤まさみといった人気女優を起用し全国のシネコンで公開されるメジャー作品だっただけに、ゴア描写に関してはそれほど期待されていませんでした。ですがいざ公開が始まってみると、容赦のない人体破壊描写で世間の度肝を抜きました!

飛び散る血しぶきの量は、ホラー映画好きも驚かせるほどだっただけに、「ちょっと怖そうだけどテレビでいっぱい宣伝しているし、見に行ってみようかな」と劇場に来た人は大変なショックを受けたのでは? 映画好きの間では、「なぜこれほどの公開規模で、こんな表現が実現したんだ?」と嬉しさ半分不思議がる声が上がりました。

森田剛が怖すぎた『ヒメアノ〜ル』

そしてもうひとつ、世間に衝撃を与えたのが5月に公開された『ヒメアノ〜ル』(監督:吉田恵輔)です。こちらはV6・森田剛の初主演映画!……なのですが、ジャニーズアイドルの主演映画としては異例のR15 +指定を受けました。それもそのはず、森田が演じた“森田正一”は連続殺人鬼という役どころ。舞台で活躍し、演劇好きにはその演技力の高さが知られた森田ですが、それだけに次々と他人を“餌”にしていく姿はトラウマになる……! ジャニーズアイドル主演映画というと、甘〜い恋愛モノ、それか感動作をイメージしてしまいますが、ひたすらに人間の暗黒面を描いた、ジャニーズ史の中でも異色の作品となり、“俳優・森田剛”の力を知らしめました。

少年犯罪、加害者家族の歪み…

他にも公開規模はそれほど大きくないものの、口コミで人気が広がりロングラン上映されているのが、5月より公開されている『ディストラクション・ベイビーズ』(監督:真利子哲也)です。柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎たちがメインキャラクターを演じて、若者が衝動のままに暴走していく、少年犯罪をベースとした物語。もちろん同作品もR15+指定です。

あとは三浦友和主演で6月より上映中の『葛城事件』(監督:赤堀雅秋)でしょうか。こちらはPG12指定と、上記の作品たちに比べて直接的な描写の過激さでは劣りますが(それでも十分過激なんですが)、そのぶん精神面で来る! 次男が無差別殺人事件を起こした家庭が抱えていた歪みを嫌と言うほど丁寧に描き、ある種の称賛も込めて「後味の悪い作品」と評判です。

“理不尽な暴力”に恐怖する現代

激しい暴力描写はどうしても好き嫌いがわかれるもの。R15+やPG12指定されている上記の作品がヒットを飛ばしたり、ロングラン上映されている状況は、不思議といえば不思議です。

なぜ暴力的な要素をもった名作が次々と誕生しているのか……。それには現代の社会状況も少し関わっているのかもしれません。通り魔的な凶悪犯罪のニュースが続き、「自分もある日突然おかしな人に刺されて死んでしまうのではないか?」という不安を完全に笑い飛ばせない状況です。そんな理不尽な暴力への恐怖が、逆にバイオレンスの名作を生み、同時に人々に暴力的な題材を求めさせる土壌を作っているのかもしれません。

(文/原田美紗@HEW)