ついに興行収入150億円を突破し、最終的に200億円を超えるとも言われている大ヒット映画『君の名は。』。そこに「プロから見ると全然面白くない作品」と酷評した漫画家の江川達也が大炎上しました。同業者である奥浩哉からも批判が出るなど非難が殺到しましたが、なぜここまで炎上してしまったのでしょうか。

同業者からも苦言

江川達也は10月6日放送のフジテレビ系「バイキング」で、新海誠監督の最新作『君の名は。』について「これ売れるなとは思いましたけど、丁寧に売れる要素をぶち込んでいて、言ってみれば大人のドラえもんみたいなもん」とコメント。その上で「プロから見ると全然面白くないんですよ。作り手から見ると、作家性が薄くて、売れる要素ばかりぶち込んでいる、ちょっと軽いライトな作品」と酷評しました。

どんな作品も、面白いという人と面白くないという人がいて当然。コメンテーターという影響力がある立場とはいえ、江川達也が厳しい評価をした事自体はなんら責められるべきものではありません。しかしネット上を中心に江川の発言に対し
「観客はプロではない」
 「面白いかどうかは観客が決めるもの。プロが面白いと思う映画を観客が求めているわけではない」
「『プロ』が全然面白くないというものがここまで売れるのなら、『プロ』が面白いと思うことになんの価値があるの?」
などと批判が殺到。どうやら、「プロから見ると」という一言が火種となったようです。

さらに、大ヒット漫画『GANTZ』で知られる漫画家・奥浩哉までも江川について「この人、なんのプロなんだろう...」とツイート。
「プロ漫画家代表みたいなのやめて欲しいですね」
「プロとかいう言葉は外してほしかったです」
「批判は構わないけど、あくまで個人的にはってことにして欲しいですね」

と同業者からも言われてしまいました。ここでもやはり「プロから見ると」と前置きしたことが非難の原因となっています。

“上から目線”が江川達也のキャラクター

1984年に漫画『BE FREE!』でデビューした江川達也は、続く『まじかる☆タルるートくん』が大ヒット。その後も『東京大学物語』『GOLDEN BOY』などヒット作を生み出しました。2001年以降は『日露戦争物語』『源氏物語』『家畜人ヤプー』などの作品を連載しています。言うまでもなく漫画家のビッグネームですが、最近は短命だったり中途半端に終わる作品も多く、1990年代の『タルるートくん』『東京大学物語』を超えるヒット作が出ていません。このことが「ここ20年特に売れる作品を描いてないくせに、“プロとして”なんてよく言うもんだ」と炎上を大きくした要因のひとつと言えそうです。

そしてなにより……江川達也という人は、昔からいろんな人に上から目線で噛みついてきた人物。宮﨑駿アニメに対して、「犯罪者の心をくすぐる」「プロから見ると、巧妙にエロとバイオレンスが隠されていて一番危ない」と各所で批判したのは有名な話。また“プロから見ると”です。あの手塚治虫に対して、「ダメ人間」呼ばわりしたことも。ここでも「一般の人は漫画の世界を知らない」と言ってのけています。藤子・F・不二雄が亡くなった後は、『ドラえもん』を「人の欲望を際限なく肥大化させる最悪の漫画」といい、藤子・F・不二雄個人についても「子供を食い物にするハラ黒い大人」と断じています。

『GANTZ』の奥浩哉が指摘するように、個人の感想を漫画家代表の意見のように言ったことが今回の炎上の原因であることは間違いないでしょう。ただ、以前から上記のような弁舌を繰り返していたことで、周囲から「また江川が言ってるぞ」と、より大きな炎上を呼んでしまった面も否めません。作品に対する批評や議論は大いに面白いですが、あまり過激な物言いはそれを通り越して人を不愉快にさせます。まあ、今回のことは、新海誠がそれだけビッグになったということで終わりにするのがいいかもしれませんね。

(文/大木信景@HEW)