鉄道大国・ニッポンの各地には、個性豊かな路線や駅がある。『AERA 2016年9月26日号』では、乗客の生活と、運行を支える技術が手を携えて発展を遂げてきた鉄道のさまざまな姿を、東西対決で特集。ここでは東西の意外な乗り入れ対決を紹介する。

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 ここ10年ほど、大手私鉄の観光特急が他社路線に乗り入れを開始するケースが目立つ。2008年には小田急の特急ロマンスカーが東京メトロ千代田線に乗り入れるようになった。小田急はこのとき地下鉄のトンネル幅にあわせた新車両MSEを製造している。車両デザインは建築家の岡部憲明氏の手になり、フェルメール・ブルーで塗装されたスマートな車体は、地下鉄線内でも明るさを感じさせる。

 本来は箱根観光を目的に登場したロマンスカーだが、都心に勤務する人たちの住宅が郊外へ広がるに従い、通勤列車としても利用されるようになった。東京メトロ直通のロマンスカーも主に通勤・会社帰りの利用客を見込んで、朝は本厚木発の「メトロさがみ」、夕方〜夜には千代田線内発の「メトロホームウェイ」が運転されている。

 一方、関西は鉄道会社同士の直通運転が少ない。そんな中、09年に阪神なんば線が開通、つながった阪神と近鉄の路線を列車が相互乗り入れするようになった。関西の大手私鉄間ではこれが初のケースとなる。

 近鉄ではさらに、沿線に奈良や伊勢志摩などを擁する自社路線と、神戸などを擁する阪神路線とのあいだを直通する特急の運行を計画、14年3月に阪神の神戸三宮と近鉄の賢島間で日帰りの団体専用貸切列車が運転されたのを皮切りに、近鉄22600系特急車両による阪神・近鉄直通の団体臨時列車の運行が開始された。現在までに近鉄の企画したツアーは52回を数える。

 将来的には直通特急の定期運行も期待される。近鉄は「さらなるネットワーク拡大によりお客様へのサービス向上および市場の拡大をはかりたいと考えているが、まずは現在運行している団体臨時列車の実績を積み上げ、お客様のニーズをつかんでいきたい」と話している。(ライター・近藤正高)

※AERA 2016年9月26日号