ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、メディアに出る人々の「髪型と記号化の関係」を取り上げる。

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 髪型というのは、その人を表す記号でもあります。かつて私も「オネエブーム」なる時代の流れに乗ってテレビに出るようになった頃、様々な人から「記号的な髪型にしろ」と言われたものです。IKKOさんのボブや、美川さんのショートのように、シンボリックなヘアスタイルは、そのキャラや存在を浸透させるためにも必要だと。無論、ひねくれ者の私は「ならば常に髪型を変えることで目立ってみせます」と、先輩方のありがたいアドバイスを頑なに拒みました。それでも、「ブレーク期」によくしていた大きなポンパドールが、今も私の代名詞みたいになっていますし、見た目なんて記号化した方が、何かと便利なのは事実です。タレントは商品ですから、すぐお客さんの手に取ってもらえる分かり易さがあるに越したことはないわけで、かつて相当なファッションモンスターだったマツコさんですら、忙しさと反比例するように、衣装も髪型も、主張や冒険をしなくなりました。「黒柳徹子化」とでも言いましょうか(徹子さん自身の主張や冒険はさておき)。一方で「芳村真理主義」の私は、果敢に変化を付けていますが、これはこれで私なりのサービスであり、サバイバル術なのかもしれません。

 サバイバルといえば、かのプリンセス・テンコー先生は、契約上の理由により、2020年まで髪型を変えてはいけないと、今から20年ぐらい前に仰っていました。あと4年の我慢です。しかも、年齢も24歳のまま据え置きだそうです。20年前に24歳だったはずがないので、そうなると東京オリンピックが終わる頃、一気に40歳ぐらい歳を取るテンコー先生が見られることになります。これに勝るイリュージョンがあるでしょうか? 契約満了の記念に、東京五輪の閉会式には、是非ともテンコー先生を!

 話が逸れましたが、髪型と記号化の関係は、男性の方が顕著です。小泉元総理や田村正和さんのように、「暗黙の契約」が成り立っているケースも多々ありますし、役作りや、よほどの一大決心(松本人志さんなど)を伴わない限り、大胆かつ急激なイメチェン(経年による増減は別モノ)は、女性以上にリスクが高まります。裏を返せば、頻繁に髪型を変えられるというのは、確固たる商品価値がある証しなのです。「やたらと髪型を変える男」で、差し当たり思い浮かぶのは、ゴルフの石川遼くんです。10代から20代への過渡期ということを差し引いても、遼くんの漂流は長かった。最近ようやく落ち着いた様子ですが、気付けばもう24歳……。嗚呼、可愛かった遼くん……。

 で、何が言いたいかって、サッカーのネイマール選手です。今までも多種多様なスタイルに挑んできた彼も、今度のあれは大丈夫なのでしょうか? パンチパーマです。昔懐かしボビ男です。なんだかとても厳(いか)つい雰囲気になっちゃって、それこそスポンサー的に問題ないのか心配になりますが、どうやら「ボビ男・ネイマール」は、世界中で好評のようです。さすがはスーパーアイドル。ただ私としては、かつて「ひろみ郷」がニューヨークに渡り、謎のパーマを当てて帰ってきた時のことを思い出しました。もしくは20年前に2丁目で会った「オナベの勝さん」に見えて仕方ありません。要するに、タイプだった男のイメチェンが気に食わず、イチャモンをつけたいだけです。髪は男の命。

※週刊朝日  2016年9月16日号