河合奈保子の30年ぶりの写真集「再会の夏」が大ヒットするなど、1980年代のアイドルブームが復活している。アイドル文化に造詣の深い中森明夫氏がその理由を紐解く。

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 河合奈保子の写真集がバカ売れしている。懐かしアイドルの水着写真が週刊誌の巻頭グラビアを毎週のように飾っている。いったい今はいつの時代なんだ!? 突如、巻き起こった80年代アイドルの再燃ブーム。週刊誌や紙の写真集を購入するのが今や40代以上であり、現在の中年男子層の青春時代のアイドルこそが80年代アイドルなのだ。彼らが40〜50代の小金を使える年齢となって、懐かしグッズが「大人買い」される感覚で復刻版アイドル写真集がバカ売れって構図なんだろう。

 80年代のアイドルブームは熱かった。スマホもネットもなければ、握手会も盛んでなく、「会いに行けるアイドル」もいない。テレビや雑誌グラビア等、メディアを通して輝く美少女らにファンは「遠い愛」を抱いていた。まずアイドルは単体だった。AKB48やももいろクローバーZや現在ブームの群体(グループ)アイドルらとは、違う。今やアイドルは分業化された。グラビアアイドルやバラドルやアイドル女優や。80年代は一人のアイドルが歌も唄えば、ドラマもやり、バラエティにも出る「総合アイドル」だった。そんな「総合アイドル」がテレビの水泳大会や水着グラビアに登場してくれるのがありがたい! という感覚を(今や中高年となった)80年代アイドルのファンらは持ち続けている。

 天皇陛下の生前退位論議や結成28年のSMAPの解散や──平成の終わりが囁かれる。今や時代の転換点。テレビのCMではなめ猫が踊り、ボディコン姿の田中美奈子が「ナウい〜!」と奇声を上げる。80年代とは実は昭和末で、最後に景気のよかった頃だ。80年代アイドルの水着写真集を見て「このポッチャリ体形がいいんだよな〜」と中年男子はウットリとしていた。なるほど現在のアイドルにはないふっくらとした体形に好景気の頃の記憶を甦らせているのかも。河合奈保子の水着写真のはちきれんばかりの豊かな胸やふっくらしたボディには(バブルとは言うまい)、そう、“80年代の夢”がつまっているのだ!!

※週刊朝日 2016年9月30日号