漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、終戦後の淡路島を描いた「瀬戸内少年野球団」(テレビ朝日系 9月17日21:00〜)をテーマに論じる。

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 27歳でこの世を去った夏目雅子の遺作、映画「瀬戸内少年野球団」(84年公開)が、武井咲主演のドラマで復活だ。「私たち、野球をやりましょう」、どこか儚(はかな)げな夏目の表情と、ジャズの名曲「イン・ザ・ムード」が、今でも鮮やかに蘇る。でも映画は映画、ドラマはドラマだよね。そんな心持ちで見始めた本作、開始数分で「ん?」と思う。

 子役たちがみんな、足長すぎ。顔小さすぎ。着てるランニングシャツも、カーキやライトブラウンと色数豊富で、もうユニクロにしか見えない。駒子先生(武井)の編み込みヘアも、毛先がおしゃれな茶髪にカラーリング。ティファニーの副社長と不倫とか(ドラマ「せいせいするほど、愛してる」)、いろいろ忙しいのかもしれないけど、昭和じゃないにもほどがある。

 出征した夫・正夫(三浦貴大、映画版は郷ひろみ)が戦死したという知らせを受け、駒子は、夫の弟・鉄夫(栗山航、映画版は渡辺謙)との再婚を勧められる。

 映画では、ここで想いをつのらせた鉄夫が無理やり駒子を手ごめに……というシーンがあるんだけど、ドラマではそこはなかったことに。この平成の世の中、もはや手ごめはNGなのか。

 それゆえ、片脚を失って夫が復員してきた時、引け目を感じた駒子は、その顔を見ることもできないというシーンも、あっさりスルー。夫と枕を並べて夜を迎えれば、「そっち(の布団)に行ってもええ?」と、積極的な駒子なんである。しかし二人は寄り添ったまま、語らうだけ。一瞬期待させておいて、がっかり袋とじグラビアか状態。

 そして、なかなか始まらない野球。始まったと思うと、子供たちのユニフォームも靴もぴかぴか。対戦チームもぴかぴかで、まるでリトルリーグの試合みたい。転校してきた少女・武女(むめ・本田望結[みゆ]、映画版は佐倉しおり)の父・海軍提督の戦犯問題と処刑もなかったことになり、最後は武女父子の乗る連絡船を見送りながら、子供たちが叫ぶ。「きっと、わしらはこれから始まるんや!」。それ、打ち切り漫画の最終回だから。

 瀬戸内の青い海と空。すべてがフワッとしていたドラマ版「瀬戸内」。一番の衝撃は、映画版の竜太少年役が、今回ドラマ版では旅役者を演じた素敵にいかつい坊主頭、あの「あさが来た」の番頭はん・山内圭哉だったってことかも。

※週刊朝日 2016年10月7日号