マット・デイモン主演の人気アクションシリーズが9年の時を経て帰ってきた。第4作「ジェイソン・ボーン」のヒロインに抜擢されたのは、今年オスカー女優となったアリシア・ヴィキャンデル(28)。初来日を果たした彼女に、映画にまつわる話を聞いた。

 野心を秘めた、したたかな美しき女性CIAエージェント、ヘザー・リー。映画では近寄り難さを漂わせていたアリシアだが、取材部屋へやってきた彼女は身長170センチの筆者よりずっと小柄でかわいらしさ全開。冷酷な雰囲気はみじんもなかった。

「映画のイメージとまるで違いますね」と言うと、「アハハハハハ」と大笑いされてしまった。本作出演のきっかけは、エージェントの電話から。

「フランスで撮影していた時だったんですが、『ポール・グリーングラス監督が会いたがっている』と。当時から新しいボーン映画が作られると聞いていたので、ファンの一人としてワクワクしていたんです。送られてきた台本に目を通し、監督にお会いしましたが、その時はいかに自分が何度もボーンシリーズを見ているか、どれほど好きなのかなどのお話だけ。万が一参加させていただけるなら大変光栄です、で終わりました」

 そんな彼女のボーン愛が通じたのか、後日「万が一」はやってきた。

 アリシアはスウェーデン出身。バレリーナを目指していたがケガなどが続き俳優を志すようになった。19歳の時に自国のリサ・ラングセス監督に長編映画の主演に起用され、「人生の転機が訪れた」。これまで文芸作品からアクション映画まで幅広いキャラクターを演じてきた。世界的に注目を集めたのが今年の第88回アカデミー賞をにぎわせた「リリーのすべて」だ。女性として新たな人生を始めることを決意した夫を献身的に支え、理解する妻・ゲルダを熱演し、助演女優賞を獲得した。とはいえ、受賞して2日後には本作の撮影に戻っていたと言う。

「その後もずっと現場にいることが多いので、オスカーのことを尋ねられるたびに『それって私のことなんだ』と受賞したことを思い出します(笑)」

 だれもが認める演技力だが、彼女は役づくりを「有機的なプロセスであるべきだ」と言う。監督のやり方によっても役へのアプローチが左右されるだけに、まずは「キャラクターの基礎の部分に迫ること」を第一に、撮影しながら細かなことを積み上げていく。「制作中もずっと役づくりは続きます」と語る。

 今回演じたリーはスタンフォード大学を卒業し、多くの組織からリクルートされた才女。天才ハッカーである彼女の得意分野はソーシャルメディアを通じて世界で起こりうる紛争を分析し予測することだ。だが、実生活ではインスタグラムをするわけでもなく、IT分野は「それほど得意でない」のだとか。

「せりふにはたくさんの専門用語がありました。『何を言っているんだろう?』とまったくわからなかった(笑)。そこは少々苦労しましたが、現場にはプロの技術者たちも参加していたので、わからない時は『こういう時はどう言えばいいの?』と助けてもらいました」

 本作を「ハッキリとしたアクション映画だけに、強さをしっかり打ち出していく楽しみがあった」と語ったアリシア。次のアクション映画は、アンジェリーナ・ジョリーの後を継ぎ、「トゥームレイダー」のリブート版に主演。2018年の公開が決まっている。

※週刊朝日  2016年10月14日号