人生の終わりをより良いものにすべく事前準備を行う「終活」だが、自分よがりにならずにしっかりと家族で共有すべきだという。

 もはや人生の締めくくりとして身辺整理の定番となりつつあるのが、残された家族らに向けて、自らの希望などを書き記しておく「エンディングノート」。

 だが、そこには落とし穴があるという。相続・終活コンサルタントの明石久美氏に、「書いておくべきこと」と「書いてはいけないこと」を聞いた。

 まず、トラブルの元となりやすいのが、介護を受けたい場所や人のほか、葬儀や墓に関する項目だ。明石氏がこう語る。

「『遺族に迷惑がかかるから』と、親族だけの葬儀を希望する方が多いのですが、友人の中にはきちんとお別れしたいという人もいるでしょうし、家族が、『なぜ葬儀に呼んでくれなかったんだ』と親族から責められることもあります。軽い気持ちで書いたことが、かえって遺族に迷惑となってしまうケースがあるんです」

 こうした事態を防ぐためには、独りよがりに自分の希望を書き進めるのではなく、実際に弔いをする家族とよく話し合うのが最善の策。それが難しい場合は生前契約などで葬儀を事前に決めてしまうのは避け、数社の葬儀社からもらった見積書をホチキスで添付しておく程度にとどめておくべきだという。

 墓についても同様に「弔う側」の都合を忘れてはいけない。

「『父親が家族に相談もせず、景色が良いからと遠方にお墓を買ってきてしまった。お墓参りをどうすればいいのか』というような相談を受けることがあります。本人が海洋散骨を希望しても、遺族は毎年お墓参りをしたいと思っている場合もある。軽い気持ちでノートに書いたことが、遺族の大きな負担になる可能性があるのです。事前に家族でお墓見学に行くなどしておくべきです」(明石氏)

 葬儀や墓について強い希望がないのなら、あえてふれず遺族に委ねるのも一案だという。

 一方、遺族が困らないためにぜひ書いておきたいことは、親族や友人への訃報の連絡先一覧、菩提(ぼだい)寺の連絡先など。やみくもに自身の希望を書くばかりがエンディングノートではないのである。

 さて、もう一つ気をつけたいのが、「相続」について。これについては、うかつにノートに書くべきではないそうだ。明石氏はこう語る。

「エンディングノートは遺言書と違い、法的な効力がない『メモ書き』という扱い。下手に財産の分与について書き残すと、その意思をめぐって親族間の争いの元になってしまう。もし財産分与について決めておきたいならば、遺言書作成の専門家に相談した上で、遺言書を残すなどの手段をとっておきましょう」

 さらに、自身の銀行の口座や、持っている不動産、加入している保険の一覧、親族の関係図などはエンディングノートに書いておくと、相続手続きの際に遺族が困らないようだ。ただし、盗難や盗用の恐れがあるので、口座の暗証番号や預金額までは記さなくてよい。

「エンディングノートは、あくまでも自分の今後について考え、家族と話し合うきっかけのツール。ノートの項目をすべて埋める必要はなく、自身が書き残しておきたい部分だけピックアップして書けばいいのです」(明石氏)

※週刊朝日 2016年9月30日号