放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、「銀座コージーコーナー」の「ジャンボシュークリーム」について。

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 来週10月2日は、テレビやラジオで人気を博した流通ジャーナリスト、金子哲雄さんのご命日だ。

 ぽっちゃり体形と洒落たフレームのメガネがトレードマークで、価格にとことんこだわった消費者の味方。

 晩年、ご病気のせいで激ヤセしても、「ダイエット」と通していたり、自身の葬儀をプロデュースしたり。「東京タワーを見たら思い出して」と東京・港区の心光院の共同供養塔への埋葬を希望したりと、彼の「終活」は大いに話題となった。

 そんな金子哲雄さんが差し入れとして毎回利用していたのが「銀座コージーコーナー」の「ジャンボシュークリーム」だ。

 在京局近辺だと、TBSがある赤坂サカスの、赤坂通りを挟んだはす向かいに赤坂店があり、同局に出入りするタレントやマネジャーにはよく利用されている。

 名前のとおり、一般的なシュークリームの1.5倍か2倍はあろうかという大きさ。バニラビーンズ入りのコクあるカスタードクリームと、しっとりしたシュー生地がベストマッチの、オーソドックスなタイプだ。

 金子哲雄さんがこのシュークリームを差し入れとして利用し続けていたのは、元日商岩井副社長の海部八郎氏が常に「岡埜栄泉」の「豆大福」を利用していたことに倣ったのだそうだ。

「差し入れは、それを見たらその人を思い出すのがベスト」と言っていらした金子さん。恐らく、1個124円と安価で、個別包装だから手を汚さずに食べられ、たとえば30個入りの箱をスタジオの前室に置いたときの迫力などなど、選んだ理由はたくさんおありだったと想像する。

 同じ赤坂でも高級なケーキを売りにした店はたくさんあるし、いわゆる“スイーツ女子”にとって、「コージーコーナー」の「ジャンボシュークリーム」の地位は高くはないかもしれない。

 が、同品を「バカにしてはいけない」「ちゃんと作られている」「おいしい」と言っておられたのは料理研究家の小林カツ代さんだ。その事実を知っている料理番組のベテラン女性プロデューサーや雑誌の料理ページ担当のベテラン編集者らも、「金子さんやカツ代さんのエピソードを添えて、利用することが多い」と聞く。

 つまり、いまや、ここのジャンボシュークリームを利用している人は、優れたコスパと律義な工程、確かな味を「わかっている人」というワケだ。

 ちょっとした集まりやホームパーティーなどに箱ごと出しておけば、みんなが笑顔に。バカになんかしてはいけない逸品なのである。

※週刊朝日 2016年10月7日号