大人を悩ませる便秘が今や、子どもでも深刻な状態になっている。NPO法人日本トイレ研究所の調査では、小学生の5人に1人が便秘であることが判明し、「子どもの排便外来」には患者が殺到。どうすれば現代の子どもたちは、スッキリうんちを出せるのか。実態と改善策に迫った。

「赤ちゃんのときから便秘気味で、1〜2週間、便が出ません。プルーン、ヨーグルト、オリゴ糖、食物繊維の豊富な食事、いろいろ試しましたが効果がありません。本人も出すのが怖いと言っています」

「1年生の男の子ですが、幼稚園のときに便が1カ月に1回しか出ず、小児科で浣腸をしてもらいました。また便秘になり1カ月に3回しか出ません。食事も、飲みものもあまりとりません。大丈夫か心配です」

 これらは、さいたま市立病院小児外科に設けられた子どもの排便外来や、担当する中野美和子医師がアドバイザーを務めるNPO法人日本トイレ研究所に寄せられたものだ。中野医師の著書『赤ちゃんからはじまる便秘問題』(言叢社)に数多く掲載されている。

 週1回の排便外来には、困り果てて来院する患者と保護者が後を絶たず、他の外来日も充てている状態。1日20〜30人診察しても追いつかず、今は外来を制限せざるを得ないほどだ。

「親御さんは、あの手この手でお子さんの便秘を治そうとしても、良くならない。いろいろと試しているうちに便秘が慢性化してしまうケースがとても多い」

 と中野医師。特に小さな子どもは自分の便秘に気付きにくく、自分から便秘の症状も訴えにくい。だが、苦しさは大人も子どもも一緒。おなかが張るため食事をとれなくなり、イライラ。排便の前は便意が波のようにやってくるが、出せずに大騒ぎになるという状態を繰り返す。

「多くの親御さんは子どもの排便のことで頭がいっぱい。“地獄のような毎日”と訴える人もいるほどです」

 全国4833人の小学生とその保護者に聞いた日本トイレ研究所のインターネット調査では、国際的な診断基準であるROMEIIIで便秘状態にある小学生は、全体の20.2%。3日に1回以下しか排便しない小学生は7.6%いた。便秘状態にある子の47.1%は、排便回数が少なくても危機感を持っていなかった。また、子どもの便秘状態を認識していない保護者が32.0%もいることが判明した。

 大人の便秘は、生活習慣や食生活の乱れで起こることが多いが、子どもの便秘は、体全体や腸の成長のスピード、食事(母乳・ミルク、離乳食)の状態、年齢、トイレトレーニングなど、さまざまな要因が関係。原因がわからないケースも多く、母乳を飲んでいるときから便秘になる子もいる。

 便秘のメカニズムも、子どもと大人では異なる。中野医師はこう解説する。

「大人はS字結腸や下行結腸に便がたまる便秘が多いのですが、子どもは直腸に便がたまる“直腸性便秘”がほとんどです」

 通常、大人も子どもも、肛門に近い直腸には便が存在しない。食事をとることで反射的に腸が収縮する蠕動(ぜんどう)運動が起こり、便が下りてくる。直腸の壁が便で押し広げられた刺激が脳に伝わると、“もよおす”、つまり便意が生じる。

 便秘になると排便で痛い思いをするので、子どもはトイレを我慢するようになり、便秘が慢性化。直腸は便をため込みどんどん拡張し、便が大量にたまらないと便意を感じないようになる。そうやって便秘が悪化する悪循環に陥るという。

 便はときにビール缶やペットボトルの大きさで、“お産をするように排便する”と話す親もいるそう。また、硬い便が栓のように詰まる「便塊閉塞」や、下痢便が硬い便と腸の壁の間を伝って漏れ出る「漏便」(遺糞症)が起こることもある。

 そんな子どもの便秘を治すにはどうしたらいいか。中野医師は「治療は“排便パターンをつける”のひと言に尽きる」と述べる。

「食物繊維や乳酸菌の摂取など大人の便秘対策は予防や軽度の便秘の改善にはなりますが、ある程度進行した便秘では効果が期待できません。治療のタイミングを逸して、こじらせてしまうおそれもあるので、すぐに治療を始めてほしい」(中野医師)

※週刊朝日  2016年10月7日号より抜粋