19歳のとき、薬害エイズの被害者として実名を公表し、国や製薬会社を相手に闘った夫。結婚できるとは思ってもいなかったという参議院議員の川田龍平氏が生涯の伴侶に選んだのは、2001年の米同時多発テロ事件で命拾いした経験を持つ国際ジャーナリストの堤未果氏だった。常人には計り知れない、多くのものを背負った2人は、結婚を決意した。2度目のデートで川田氏がプロポーズし、それ以降、会うたびにプロポーズしたという。

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妻:お互いのことをよく知らないうちから「結婚」ですからね。悩みましたよ。

夫:反対もされたしね。

妻:友人に医師がいるんです。その子から「病気のデパートみたいな人だよ? 本当にいいの?」と。

夫:僕も結婚なんて、考えられなかったんですけどね。でも、こんなに価値観や物の見方に共感できるところがたくさんある人には、この先二度と会えないぞ!と。

妻:そうしたら、ある日突然、結婚しよう、ってひらめいたんです。

夫:でも一つだけ、条件があると。私より一日でもいいから長生きして、って言われました。

妻:人間、いつ死ぬかわからない。病気になるかもしれないし、突然、交通事故に遭うかもしれない。人があっけなく死んでいくのを、私はニューヨークで嫌というほど見ましたから。

夫:それまではしょっちゅう、インタビューなどで「どうせ長くは生きられない」って言ってたんですが、それももう言わないで、と。

妻:言霊は現実をつくりますからね。

夫:驚くべきことに、結婚したら、劇的に健康状態が良くなったんですよ。

妻:HIV感染者は免疫状態とウイルスの量を定期的に測定するんですけど、結婚直後からウイルスが「非検出」の連続で。

夫:免疫を示すCD4という数値があるんですが、健康な人は700から1300ぐらい。HIV感染者は200を切るようだと、エイズを発症するとされていますが、結婚してからはなんと1000近くまで!

妻:過労でぐったりしていた主治医より高かったことがあるもんね(笑)。

夫:風邪もひかなくなりましたしね。

妻:よく笑うようになった。

夫:それはいえる! どんなに疲れていても、家に帰るとほっとするし。時々、怒られますけど……。

妻:大事にとっておいた最後のお菓子を無断で食べちゃった、とか。

夫:甘い物に目がなくて(笑)。

妻:本当に長生きしてもらわないと。私のためだけじゃなくて、彼の存在そのものが、命の大切さを伝えるメッセージなんですから。

夫:僕らには、毎日が大切な積み重ねです。だからわが家には、何があっても夫婦げんかしたまま家を出てはいけないっていうルールがあるんです。

妻:二度と会えなかったら、絶対後悔するから。毎年、誕生日が来るたびに感謝します。また1年生きてくれた、ありがとう!って。

夫:大人になれるとさえ思ってなかった僕が、今や引退したら2人で何しよう、なんてワクワク考えてますからね。

妻:それまでは精いっぱい、がんばらないとね!

※週刊朝日  2016年10月14日号より抜粋