行楽と食欲の秋には、駅弁がお似合いだ。これまで全国津々浦々で食べてきた「駅弁の女王」小林しのぶが、今食すべき逸品の数々を紹介する!!



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 この10年で駅弁を取り巻く環境はガラリと変わった。

 ひとつは取り寄せができる品が増えたこと。以前は、日持ちがする寿司類の一部を除いて通販はできなかった。二つ目は有名料理店や料理人による駅弁の誕生。伝統の味を頑固に守り続ける老舗と新規参入有名店とのバトルが、業界を活性化させている。最後に、北から南まで全国の駅弁がそろう売店の台頭。

 便利な時代になったものである。が、時々立ち止まり振り返ることがある。

 駅弁はその駅でしか買えないから「駅弁」。技術が進歩し、流通がスムーズになり、メジャーになればなるほど、“郷愁”とか“望郷”の気持ちが薄れていくのを感じる。それはファンとしてとてもサビシイことだ。

 そこで今回は、東京駅では絶対に買えない、とびきりうまい駅弁もたくさん選んだ。この秋はぜひ、駅弁を食べに行く旅を。

●「いすみの宝石箱弁当」(1300円・お茶付き)
千葉県いすみ市の食材をふんだんに使用。いすみ鉄道大原駅売店で購入できる。土日祝のみ販売。数量限定で予約制

【新作】
●まぐろいくら弁当(東京駅/1250円)
漬けマグロとイクラ醤油漬け、錦糸卵がたっぷり! ほどよくワサビが利いたビンナガマグロは、酢飯との相性抜群。豪快な海鮮系が少なかった東京駅の注目駅弁だ。(問)日本レストランエンタプライズ(NRE)

●秋のかさね箱(京都駅/1200円)
秋の京都散策にピッタリの二段重弁当が登場した。一の重には、鮭塩焼き、きのこ煮、サツマイモ甘露煮、いかアーモンドなどが詰め合わされている。二の重には、栗と山菜の炊き込みご飯が。12月27日まで販売。(問)淡路屋

●三嶋物語 秋日和(三島駅/1000円)
三島産の食材を取り入れた二段重弁当。一の重には、三島甘藷やマツタケ、ホウボウのチリソースなど。二の重には、炊き込みご飯にほぐし焼き鮭や三島産しめじなどがのっている。11月30日まで販売。(問)桃中軒

●千屋牛カルビとすき焼き重(岡山駅/1780円)
岡山県新見市で育成された黒毛和牛、千屋牛がおかずのメイン。自家製タレに漬け込んだ後で焼き上げたカルビ、甘辛く味つけしたすき焼きの2種類で味わえる。肉好きなら見逃せない新作登場だ。(問)三好野本店

【珍弁】
●ちらし寿司 ておけ(美濃太田駅/1000円)
美濃焼陶器に酢飯が敷かれて、その上にエビ、タコ、ウナギ、卵焼きなどの具材が重ねられた。取っ手つきの手桶型の容器は、再利用可能。昭和時代から販売されているローカル線の人気駅弁のひとつだ。(問)向龍館

●ひとくちだらけ(東京駅・大宮駅/1200円)
前代未聞! 津軽の伝統料理24品をひと口ずつ食べられる量にまとめた。アイデアが素晴らしく、盛り付けも彩りも愛らしい。素材のほとんどは青森県産で、ホタテは四つの料理に登場。(問)つがる惣菜

●カープ日本一優勝祈念弁当(広島駅/1080円)
広島東洋カープの日本一を“祈念”して誕生。ミルフィーユカツ(勝つ)、ウィナー(勝者)にちなんだウィンナーなど、食材も勝利にこだわっている。日本シリーズ4戦目となる10月26日までの販売。(問)広島駅弁当

●北斗七星(函館駅/1300円)
北海道新幹線H5系のフォルムをイメージした容器に、イクラ醤油漬けやホタテの薫製、タコのやわらか煮、鮭のたたきなどを詰めた。料理の完成度は高く、子どもはもちろん、大人も十分満足。(問)北海道キヨスク

●モー太郎弁当(松阪駅/1350円)
松阪名物のすき焼き肉を存分に味わえる。百貨店などで開催される駅弁大会に出品されると、あっという間に売り切れる。そこでついたあだ名が「秒殺のモー太郎」。その実力をぜひ体感してほしい。(問)新竹商店

【豪華海鮮弁当】
●かきの土手わっぱ(広島駅/1300円)
広島の郷土料理が駅弁に。白飯の上に広島県産の大粒カキ4個、焼き豆腐、ささがきゴボウ、シラタキなどがのり、味噌で味をととのえ土手鍋風に仕上げられた。常温でも土手わっぱの味そのもの。(問)広島駅弁当

●のどぐろと香箱蟹弁当(金沢駅/1600円)
白身のトロとも呼ばれる、のどぐろ(アカムツ)の塩焼きと、香箱ガニ(ズワイガニのメス)の競演。ベニズワイガニやイクラの醤油漬けなども添えてあり、酒の肴にも最適。11月から3月まで販売。(問)高野商店

●波の伊八弁当(安房鴨川駅/1800円)
鴨川の名工“波の伊八”からネーミング。「伊」勢海老とタコの「八」本足にも掛けている。さんが焼きや地元産のヒジキ、2種類の炊き込みご飯も味わえる。4日前までに要予約で、注文は5個から。(問)南総軒

●鮑雲丹めし(函館駅/2000円)
北海道新幹線開業に合わせて今年3月に発売。北海道産のムラサキウニを使った炊き込みご飯の上に、エゾアワビの酒蒸しとスライス、イクラ醤油漬け、エゾバフンウニが。見た目も豪華な駅弁。(問)北海道キヨスク

●大玉ほたてと大漁ウニ弁当(八戸駅/1780円)
ウニの煮汁を混ぜて炊いたご飯を覆うように、ウニとイクラが盛りつけられている。そのうえセンターに存在感たっぷりの北海道産大玉ホタテが! だし汁で蒸したウニは、ボリュームがあり満足感大。(問)吉田屋

【名店も進出】
●上等いか三昧辨當 by 萬坊(博多駅/1200円)
佐賀県唐津市呼子町のイカ料理の名店・萬坊が調製する、イカ尽くし弁当。イカしゅうまい、イカめしなどの定番に、イカチーズボール、イカ入り卵焼き、イカ甘酢煮など17種の料理を盛り込んだイカしてる駅弁

●チキンライス弁当 by たいめいけん(東京駅/1300円)
昭和6年創業の洋食店・たいめいけんも参戦。チキンライスをはじめ、スパゲティナポリタン、海老グラタン、海老フライ、とんかつ、フライドチキンなど盛りだくさん。東京の洋食が、この一箱に凝縮されている

●焼きあなごめし by 日本橋玉ゐ(東京駅/900円)
都内でも珍しいアナゴ専門店が調製する。ほどよい甘さのタレが、香ばしい焼きアナゴのうまみを引き出している。ご飯にタレがじわりと染みてよい感じ。付け合わせは、店の焼き印のある卵焼きと、葉わさび佃煮

【駅弁の女王イチオシ!】
●ひふみ弁当(一ノ関駅/1350円)
ため息が出る。何度でも食べたくなる。岩手県一関市門崎地区で育成された黒毛和牛「門崎丑」熟成肉の深いうまみといったら! あぶり焼き肉、醤油と山椒で甘辛く煮込んだスジ肉、白金豚と国産牛をブレンドしたハンバーグ。3種の料理は間違いなくレストランの味わい。(問)斎藤松月堂

【リーズナブル弁当】
●スペシャル日の丸弁当(水戸駅/760円)
一見すると、白飯に梅干しときゃらぶきがのった極めてシンプルな日の丸弁当。実はご飯は二層仕立て。鶏そぼろ、卵焼き、牛肉のしぐれ煮などのおかずを間に仕込んだ、意外性に満ちた駅弁だ。(問)万年屋

●すきやき弁当(米沢駅/900円)
ご飯の上に、甘辛く煮込んだ牛肉のすき焼き、だしの染み込んだしらたきがのった直球勝負の駅弁。おかずは、昆布巻き、がんもどき、漬物など。昭和20年代、駅弁の素材に牛肉を使った最初の駅弁。(問)松川弁当店

●三陸秋刀魚岩手箱(仙台駅ほか/950円)
竹皮製の容器に納まった握り寿司には、酢締め、焼き、煮といった3種の調理法による秋刀魚ネタがのっている。調理法によって秋刀魚の味と風味が違うことがわかる逸品。(問)日本レストランエンタプライズ(NRE)

●鯛どんたく(伊東駅/810円)
ご飯の上に鯛そぼろを敷き詰めた鯛めし。おかずはホタテ唐揚げ、ごぼう煮、シイタケ煮、奈良漬けなど。おかずの下にもご飯を敷くなど、空間をきっちり埋めて客をもてなす心遣いが見事だ。(問)祇園

※週刊朝日 2016年10月14日号