ジャーナリストの田原総一朗氏は、使用済み核燃料サイクルに固執する政府の姿勢に疑問を投げかける。

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 政府は9月21日、高速増殖原型炉「もんじゅ」を廃炉にする方向で見直すことを決めた。

 原子力開発を進めるために原子力委員会と科学技術庁(現文部科学省)が設けられた1956年、政府は最初の長期計画で「主として原子燃料資源の有効利用の面から、増殖型動力炉の国産に目標を置く」とうたった。

 使用済み核燃料を再処理してできたプルトニウムを増殖型動力炉、つまり「もんじゅ」で燃やすと、燃やした以上のプルトニウムができる。その意味で「夢の原子炉」と言われた。「もんじゅ」がうまく稼働すれば、ウランは1千年でも2千年でも、もつということであった。

「もんじゅ」は、実用炉の前々段階の原型炉である。もんじゅは冷却材にナトリウムを使っていて、ナトリウムは水と触れると爆発する危険な物質だ。海外では事故が起きていたのに、「もんじゅ」を運営する動力炉・核燃料開発事業団(当時)は、日本ではナトリウム漏れのような事故は起きない、と強弁していた。

「もんじゅ」は94年に初臨界に達したが、翌95年にナトリウム漏れ事故を起こした。しかも事故後に被害を小さく見せようとして事実を隠したり偽ったりし、社会の信用を失ってしまった。2010年5月には14年5カ月ぶりに試験運転を再開したが、8月に炉内で機器が落下する事故が起きて運転は凍結された。

 実は、海外では高速増殖炉の技術的な難しさやコスト高がはっきりして、開発を断念する国が相次いでいる。米国や英国、ドイツなどは90年代に高速増殖炉の実験から手を引いている。だが、日本はなぜか「もんじゅ」にこだわった。ところが12年11月に、約1万点の点検漏れが判明。13年5月、原子力規制委員会は事実上の運転禁止命令を出した。しかも、その年の10月に、また少なからぬ点検漏れが判明しているのである。

 1970年代の計画当初、「もんじゅ」にかかる費用は350億円という見積もりだった。ところが、これまで「もんじゅ」には1兆円以上の国費がつぎ込まれたにもかかわらず、この間、稼働したのはわずか二百数十日だけで、しかも、止まったままでも維持には年間200億円という莫大な費用がかかっているのである。

 一方、青森県六ケ所村の再処理工場も、93年の着工以来23回、完成延期を繰り返し、建設費用は当初の3倍、2兆円以上に膨らんでいる。核燃料サイクルという国策も、ほとんど破綻状態なのである。

 だが、政府は「もんじゅ」を廃炉にすることは決めたが、まだ核燃料サイクルにはこだわっていて、新たな高速炉の開発に取り組むという姿勢を示しているようだ。年間200億円を延々と無駄に費やし続けてきたことを、どう考えているのだろうか。

 日本には現在、処理されないままの使用済み核燃料が1万7千トンもたまっている。そして、使用済み核燃料の最終処理をどうするのか、その方策は定まっていないし、どうもその方策を真剣に考えようとしているようにも思われない。原発の再稼働を決める前に、最終処分の方策を定めるべきである。小泉純一郎元首相は、フィンランドの最終処分場「オンカロ」を見て、使用済み核燃料が無害化するのに10万年かかると知り、「原発反対」を主張し始めたのである。

※週刊朝日  2016年10月7日号