今年6月、野村総合研究所(NRI)が「2033年、約3軒に1軒が空き家になる」と衝撃的な予測を発表した。親が住んでいた実家や、苦心して買ったマイホームも家余りの時代に突入し、放置すれば、リスクに変わる可能性も。空き家の処分、活用の方策を探った。

 実家の処分は「お金」が絡むだけに、兄弟姉妹、親族などの人間関係にダメージを与えることもある。

「もう思い出したくもありません」

 そう語るのは、実家が中国地方にある東京都内在住の60代男性Cさん。2人の姉がいる。

「父が28年前に亡くなり、母が18年前に亡くなりました。そのときに東京に住んでいる一番上の姉がどういうわけか、『家屋も金融資産も全部、私に譲ってちょうだい』と主張。私は小さいころ、父から自分(Cさん)が継ぐために家を建てたと聞いてました。ただ、私が結婚するときに両親が『東京に行くんだったら、お前とは親子の縁を切る』と言っていた。姉はそれに目をつけ、執拗に権利を主張しました」

 実家の資産価値を調べてみたら驚いた。数億円の価値があったからだ。

「私は生活に困るほどではないので、まあいいかなと思っていたんですが、姉と4年半にわたる法廷闘争を繰り広げました。姉は法廷で泣きながら、9対1の相続権を求めてきた。アホらしい争いと思いつつも、最終的には、姉6、私4の配分で結審しました。もうほとほと疲れ果て、姉とは一生会うつもりはありません。お金は魔物です」(Cさん)

 自身の生活設計に影響する場合もあるから悩ましい。生活保護を受けながら、都内のアパートに住む70代女性のDさん。都内一等地の一戸建てに住んでいた叔父が亡くなった。叔父の子ども、きょうだいも亡くなっていたことから、相続の権利がDさんに回ってきたという。駅前の住宅で、1億円相当の物件だった。

「固定資産税、都市計画税などで年間50万円かかると言われました。住宅を売れば、生活保護を2年間さかのぼって返さなければならず、生活保護の支給も打ち切られる。最終的に区役所に寄付しました」

 住宅は資産のはずだが、将来のトラブルを回避したということだろうか。住宅情報誌の編集長などを務めた住宅コンサルタントの大久保恭子氏は言う。

「民法では等しく権利を分け合う規定で、誰かが得をすることはもめごとの解決にはなりません。最終的にはお金の問題なので、平等に権利を分け合うしか解決法はありません。そのためには親が元気なうちに家族会議を開いて、よく話し合っておいたほうがいい。その結果を申し送り事項として遺言書にしておけば円滑に運ぶはずです」

 住宅政策を担当する国の窓口は、国土交通省住宅局だ。同局の担当者は、問題解決の処方箋として、(1)新たな住宅循環システムの構築(2)空き家を活用した地方移住、2地域居住の促進(3)介護、福祉、子育て支援施設への転換──などを例に挙げるが、実際に空き家問題に取り組むのは市区町村。国は「自治体の取り組みを後押ししたい」(担当者)と及び腰だ。

 この問題で先駆的な取り組みで知られるのが東京都足立区。区内には古い木造住宅が多く、大地震などの防災が悩ましい。同区は空き家やごみ屋敷対策として、11年、13年に対策の条例を施行。勧告に従って解体工事をすると費用の9割、最大100万円を助成している。

 富山県射水市は解体費用の半分、最大50万円まで助成、さらに解体後の新築工事に要する費用の半分、最大60万円まで補助金を出すという。先手を打たなければ、地域コミュニティーの崩壊につながりかねないとの危機感からだろう。

 地方税である固定資産税は、相続税と違って物納という制度はない。家屋を所有する限り、なにがしかの税負担がかかってくる。空き家の売買、解体もおのずと限界がある。そうであるなら、家が朽ちてしまう前に、地域やNPO、あるいは子育て世代が、空き家を積極的に活用できる仕組みを整えるべきではないか。

※週刊朝日  2016年10月14日号より抜粋