作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。二重国籍問題が取り上げられた蓮舫氏に焦点を当てる。

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 民進党の幹事長に野田さんの名前が出た朝、くらっときた。蓮舫さんが代表になったら、野田さんがついてくるよ! とは政治に詳しい友人たちが口を揃えていたことだけど、いざ現実として目の当たりにすると、受け止めきれない。あんな大事故起こしたのに原発再稼働をうたった野田さん、わけわかんないタイミングで解散した野田さん、瞳が無駄につぶらで怖い野田さん……ああ! 4年かけてようやく顔を忘れかけてきたというのに。悪夢が一気に蘇ってきた感じだ。

 それにしても、民進党の代表選挙にはもやもやさせられた。蓮舫さんの国籍問題ばかりが取り上げられ、誰がどんな民進党を目指すのか、伝わらなかった。しかも結局、国籍の問題について、何か希望が見える良い方向に向かったようにも思えない。

 大きな話題になった『無戸籍の日本人』(井戸まさえ著)を読むと、たった一枚の紙が、人生をこれほど重く縛るものなのかと言葉を失う。制度の矛盾と差別が集中する落とし穴が、この社会にはある。そこに立たされた人にしか見えない世界がある。

 今回、蓮舫さんに対する批判には、そのような人々に対する眼差しや想像力が欠けているものが多かった。そのことで自分のことのように痛んだ人も、少なくなかったはずだ。

 ただ、蓮舫さんには、そういう人たちの姿がどれだけ目に入っているのだろうと、考えさせられた。法律をつくり、変えられる立場にある国会議員として、制度の矛盾と差別の狭間に落ちている人に向け、蓮舫さんはどんな仕事をしてきたのか。蓮舫さんに向けられた差別発言を自分に向けられたかのように痛み苦しんだ人に対し、これからの希望や未来への道筋を、何か一言でも語ったか。

 1984年、子どもの国籍が自動的に父親の国籍になってしまう国籍法が改正された。360度どこから見ても狂気を感じる女性差別の法律の是正に、土井たか子さんがどれだけ尽力し、どれだけ男性政治家の無視と反対の中を闘ってきたことだろう。その背後に、どれほどの母や子たちの苦しみがあっただろう。

 国籍問題は、差別が集中し、生きる身体と硬直した制度の軋轢(あつれき)と矛盾の闇にある。だからこそ問いたいのだ。この種の闇が見えている政治家が、または見える立場に立たされた政治家が、どうして沖縄の辺野古基地移転を肯定し、原発再稼働を決められる野田さんを幹事長に選べるのだろうか。蓮舫さんには闇が見えていないのか、または敢えて目をつむっているようにしか見えない。

 都知事が女性、野党第1党の党首も女性、そうそう防衛大臣も女性だわ。そういう社会は、きっと女性に優しく、差別に敏感で、生きやすいはずだと思っていた。

 ところがどうだろう。いくら女性がトップに立っても、社会全体が差別に鈍く、女性に厳しく、弱者に冷たいままであれば結局何も変わらないのだ、ということを突きつけられている。

※週刊朝日 2016年10月7日号