シーズン最終盤を迎える中、優勝争いとは別のところで俄然、注目を集めている男がいる。オリックスの“超人”、35歳となった糸井嘉男だ。

 昨季は左ひざを始めとした多くの箇所に痛みを抱えた状態でプレーした影響で、打率.262、17本塁打、68打点、11盗塁と前年度(打率.331、19本塁打、81打点、31盗塁)よりも大きく成績を下げた。特に打率と盗塁は、レギュラーに定着した日本ハム時代の2009年以降で最低の数字だった。しかし、オフの間に左ひざの治療に努めて万全の状態で迎えた今季は、開幕から10試合連続安打を記録するなど好スタートを切り、その後も好調をキープ。7月31日に35回目の誕生日を迎えて以降はさらにアクセルを踏み込み、8月は月間打率.326で14盗塁をマークすると、9月は23日現在で月間打率.355の高打率に計6本塁打。チームとしては消化試合が続く中、出色の働きで球場に訪れたファンを大いに沸かせている。

 怒涛のラストスパートを続ける糸井の眼前の目標は、史上最年長での盗塁王のタイトル獲得である。これまでの自己最高は2013年の33盗塁だったが、今季はその数字を軽々とクリアし、9月6日のソフトバンク戦で大台の50盗塁に到達。糸井が今季、盗塁王を獲得すれば、82年の福本豊(阪急)、92年の大石大二郎(近鉄)の34歳11カ月を更新し史上最年長記録となる。現在、西武の金子侑司と激しいデットヒート(9月23日現在で糸井53盗塁、金子52盗塁)を繰り広げており、残り試合はオリックスが7試合、西武が5試合。若干ではあるが糸井に有利ではあり、目の離せない状況になっている。

 そして、心身ともに充実している糸井が注目を集めるもう一つの理由が、今年3月に国内FA権を取得したからである。本人は明言を避けているが、これまでの経緯を含めると権利行使の可能性は大いにある。順調にいけば来年オフには海外FA権を取得でき、電撃トレードの理由になったと言われているメジャー挑戦も可能になるが、年齢的なことを考えると今オフにFA宣言し、国内の他チームに移籍する方が賢明とも言える。抜群の身体能力を活かした打撃、守備、走塁、そのすべてが超一級品であることはすでに日本中に知れ渡っており、獲得に手を挙げる球団は多いだろう。

 国内の移籍先の有力候補とみられているのが、巨人と阪神だ。巨人の外野は長野久義が不動の存在ではあるが、それに続くのがギャレット、橋本到、立岡宗一郎、亀井善行といった面々でいずれも今季は不満の残る成績。坂本勇人がひと皮むけた今、リードオフマンとして糸井が加入すれば攻撃力は一気にアップする。現在単身赴任で家族が東京に住んでいるだけに、在京球団である巨人への移籍を決断する条件は十分に揃っている。

 対する阪神も、外野陣には39歳の福留孝介と23歳の高山俊の2人がいるが、残り1枠が埋まらない状況。鳥谷敬の不振の影響もあって1番、3番の打順も固まらなかっただけに糸井は補強ポイントに合致する。金本知憲監督の熱意で、京都府出身の糸井の心を掴みたいところ。9月23日現在で、広島の117盗塁に対して、巨人が60盗塁で阪神は57盗塁と両球団とも走れなかっただけに、糸井は是が非でも手に入れたいタレントだろう。

 その他、豊富な資金力を持つソフトバンク、外野手が足りていない楽天、大島洋平や平田良介のFA流出が懸念されている中日も獲得に興味があるはずだ。可能性は低いかも知れないが、陽岱鋼のメジャー挑戦が囁かれている古巣・日本ハムも戦力的には欲しいところ。また、チームカラーではラミレス監督率いるDeNAがよく似合うようにも感じる。今季は球団初のCS進出を決めたチームに糸井が加われば、優勝へ向けて一気に盛り上がるはずだが…。

 いずれにしても判断するのは糸井自身。時に凡人には理解不能な発言とそのキャラクターで“宇宙人”とも言われる男の、今季の残り試合、そしてオフの動向から目が離せない。FA市場に出れば、激しい争奪戦が展開されることは間違いない。