まさかの4被弾――。テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有にとって、MLBプレーオフ自身2度目となる先発マウンドは悔しい結果となった。

 現地時間10月7日にテキサスで行われたアメリカン・リーグ地区シリーズ、トロント・ブルージェイズとの第2戦で5回を投げて5安打、1四球で5失点。2回にはトロイ・トロイツキーに2ランを許すと、5回の1イニングでケビン・ピラー、エセキエル・カレーラ、エドウィン・エンカルナシオンに何と3本のソロ本塁打を打たれてしまった。

「ダルビッシュにとってショッキングなイニングになっています」

 この試合を放送した米TBS局のアナウンサーは、5回途中に思わずそう述べていた。このゲームを見ていた多くのファンも同じような思いを抱いたのではないか。

 ダルビッシュはそれほど被本塁打が多い投手ではない。メジャー2年目の2013年こそ26本のホームランを許したが、12年、14年、そして今シーズンも14本以下。そのピッチャーが自己最多、メジャーのポストシーズン史上でも最多タイとなる1試合4被弾を許したのだから、チームにとっても大誤算と言うしかない。

 5回までで1−5とリードされ、レンジャーズは意気消沈。以降の追い上げも及ばずに3−5で敗れ、これで今シリーズは地元での2連敗で王手をかけられた。今季リーグ最高勝率を残した強豪が、早くも絶体絶命の立場に追い込まれたのである。

「変化球を両コーナーに上手く使えば、ダルビッシュはブルージェイズ打線を抑えられる。軸になる3つの球種(速球、スライダー、カーブ)、中でも特に変化球の制球が大事だ」

 試合開始前、この試合の現地コメンテーターを務めたペドロ・マルチネスは、ダルビッシュにとってのポイントをそう指摘していた。

 この日のダルビッシュは球威自体はあるように見えたが、速球、変化球ともにコマンド(制球力)は今ひとつ。トロイツキーに対しては0ストライク2ボール、ピラーには1ストライク2ボール、カレーラには1ストライク1ボール、エンカルナシオンには1ストライク2ボールと、すべて打者有利のカウントにしてしまい、その後の真っ直ぐを狙い撃たれた。

 最後に打たれたのは速球だが、事前に変化球でストライクを稼いでおけなかったことが伏線になった。そういった意味で、メジャー通算219勝、昨年度に殿堂入りを果たした名投手、マルチネスの指摘は的を射ていたのだろう。今季メジャー全体で4位となる221本塁打を放ったブルージェイズ打線は、打者有利のカウントから速球勝負するには危険すぎる相手だったということだ。

 2012年のワイルドカードではボルチモア・オリオールズ相手に敗戦投手(6回2/3、3失点で自責点2)になっていたダルビッシュにとって、この試合はプレーオフ初勝利を目指した重要なマウンドだった。レンジャーズはエースのコール・ハメルズを送り込んだ初戦で1−10と大敗を喫していただけに、第2戦はなおさら負けられないゲームだった。そんな“マストウィン・ゲーム”での敗北は、ダルビッシュ、そしてレンジャーズに重くのしかかる。

 頼みのハメルズ、ダルビッシュの2枚看板が合計8回1/3で11安打、12失点と激しく打ち込まれた後で、巻き返す力がレンジャーズに残っているかどうか。なお悪いことに、第3、4戦は敵地トロントでの開催。状況は厳しく、今回の不本意な登板が、ダルビッシュにとって今シーズン最後のマウンドになってしまう可能性も十分にありそうだ。(文・杉浦大介)