サッカー日本代表の苦悩は深まるばかりだ。

 日本はここまでW杯アジア最終予選の3試合を終え、2勝1敗の勝ち点6。数字のうえではまずまずだが、内容はというと、不甲斐ない試合が続いている。苦杯をなめた初戦のUAE戦はもちろんのこと、その後の試合も内容がよくなるどころか、悪化してさえいる。

 アジア勢を相手に苦戦することが、過去の予選でもなかったわけではない。だが、これまでの日本はというと、相手にうまく守られてなかなか得点が奪えず、逆に一瞬のスキを突かれて失点する、という図式だった。

 ところが、今回は違う。日本はこれまでの3試合すべてで、前半のうちに先制点を奪っている。要するに絶好の試合展開に持ち込んでいるはずなのだ。にもかかわらず、2試合で同点に追いつかれ、そのうち1試合は逆転されるまでに至っている。

 つまり、日本が図抜けた力を持っていたのも今は昔。アジア勢の対戦相手と言えども、日本に対して専守防衛で一瞬のスキを突くような戦いはしていない。堂々と勝負を挑み、実際に日本と互角に渡り合っているのである。

 むしろ、先のイラク戦に関して言えば、腰の引けた戦い方が気になったのは日本のほうだ。

 日本はイラクのカウンターを怖がるあまり、ただただ相手DFラインの背後にロングボールを蹴り込むだけの攻撃に終始した。UAE戦のショックがいまだ尾を引いているのだろう。得点を奪うことよりも、「負けたくない」という意識が強くなってしまった。

 山口蛍の劇的なゴールでどうにか勝利したものの、内容的には引き分けが妥当。あるいは、負けていても不思議ではなかった。最悪の事態は免れたものの、試合内容を見る限り、まったく楽観はできない。それどころか、結果とは裏腹に、事態は悪化の一途をたどっていると言っても大袈裟ではない。

 10月11日に行われる第4戦の相手はオーストラリア。アジアトップクラスの実力を持つ強豪であり、2015年のアジアカップでは初優勝も果たしている(日本は準々決勝敗退)。言うまでもなく、今回のアジア最終予選では、日本にとって最大の難敵だ。

 かつてはイングランド・プレミアリーグなどで活躍するスター選手が揃い、アジアでは一目置かれる存在だったオーストラリアも、一時は若手が伸び悩み、以前ほどアジアで絶対的な存在ではなくなった時期もあった。

 だが、現在はマシュー・レッキー、ロビー・クルーズなど、ドイツ・ブンデスリーガで活躍する選手が台頭。かつてのオーストラリア代表を支えた、ティム・ケーヒルなどのベテラン頼みから脱した感がある。

 今回の最終予選でも、オーストラリアは2勝1分けの無敗でトップに立つ。相手をねじ伏せるような圧倒的な強さを見せつけるわけではないが、確実に勝ち点を積み重ねる手堅さはさすがだ。特に日本が敗れたUAEを相手に、アウェーへ乗り込みながら1-0で勝ち切るあたりに、今のオーストラリアの強さがよく表れている。

 日本とオーストラリアは、過去2回のW杯アジア最終予選でも同組となっているが、当時はお互いの直接対決に大きな意味はなかった。というのも、日本とオーストラリアが図抜けた2強状態にあったため、どちらにとっても引き分けで十分。最悪負けても、本大会出場への大きな障害とはならなかったからだ。実際、前回ブラジル大会の最終予選では、2戦2分けに終わっている。

 しかし、今回の対戦はまったく意味が異なる。日本の現状を考えると、負けが絶対に許されないのはもちろん、引き分けでさえ十分とは言えない。現在、W杯出場圏外のグループ4位に沈む日本にとって、オーストラリア戦は必勝の試合となる。

 ライバル撃破のカギを握るのは、4年前のロンドン五輪でベスト4に進出した世代(主に1989~92年生まれ)、いわゆる“ロンドン世代”の選手たちである。

 2010年W杯南アフリカ大会以来、日本代表は本田圭佑、岡崎慎司ら“北京世代”が長らくチームの中心を担ってきた。だが、彼らもすでに30歳前後となり、2年後の本大会を踏まえれば世代交代が急務。そんななか、イラク戦で劇的な勝利を手繰り寄せる活躍を見せたのが、清武弘嗣、原口元気、山口蛍らのロンドン世代だった。

 2018年のW杯本大会時点で27、28歳の円熟期を迎える彼らこそ、これからの日本代表を引っ張っていくべき存在。その意味では、ロンドン世代の力で日本を勝利に導いたイラク戦は、これまでの日本代表の流れを変える、エポックメイキングな試合となるかもしれない。というより、そうでなければならない。

 率直に言って、イラク戦は酷かった。内容的には見るべきものがなかった。にもかかわらず、日本は幸運にも勝利を手にすることができた。

 その勝利を、単なる勝ち点3以上の、本当に意味あるものにできるかどうかは、オーストラリア戦にかかっている。(文・浅田真樹)