いかに経営基盤を拡大するか――。2年前の2014年1月、村井満氏がJリーグの第5代チェアマンの就任時に掲げたテーマだ。これに従い、事業収入を増やしてきた。

 就任当時のJリーグは最大13億円の減収が見込まれるなど、極めて苦しい時期にあった。そこで大会方式を見直し、2ステージ制とチャンピオンシップ(CS)を導入。資金を調達し、10億円近い増収へ転じた。

 また、チェアマン就任後の2014年末には、「明治安田生命保険」と翌年から4シーズンにわたるタイトルパートナー契約を締結。さらに、「スカパーJSAT」と翌年から5シーズンに及ぶ海外放送権販売契約にこぎ着けている。

 そして今年の夏、イギリスの動画配信大手「パフォーム」グループと放映権契約を取りまとめた。その中身は来年からの10年間で計2100億円が転がり込むケタ違いのもの。文字どおり、経営基盤が拡大されたわけだ。

 村井チェアマンはその他の分野への目配りにも余念がなく、重要戦略として以下の5つを掲げた。1・魅力的なフットボール、2・スタジアムの整備、3・デジタル技術の活用、4・国際戦略、5・経営人材の育成。今後、こちらへの投資も積極的に行っていく腹積もりだろう。

 要職を歴任した「リクルート」社からの転身組だが、高校時代はサッカー部のGK。いわゆる「最後の砦」というイメージが現職と妙に重なる。日本代表や浦和レッズの熱心なサポーターだったことでも知られ、ファン目線を持ち合わせた人――と考えるのが自然だろうか。

 ここまでのプロセスは順風に見えるが、Jリーグ自体の真価はこの先、問われる。J1からJ3まで実に50クラブを超える大所帯。経営基盤のみならず、市場そのものを拡大していく必要があるわけだ。2100億円という巨額のマネーを元手にJリーグをどう発展させていくか。チェアマンには、そのビジョンが問われている。

「大会日程や大会方式といった、フットボールを構成する要素に関しても、制約なしに、あるべき姿で、われわれは議論していくことができるようになった」

 新たな放映権契約の会見で、チェアマンは踏み込んだ発言を口にしている。苦渋の決断であった2ステージ制から、再び来季から従来の1シーズン制へ――。それを示唆するものと受け取れる。だが、「あるべき姿」という理想を追い求めてもいいタイミングとは、いつなのか。そこは慎重な議論が必要かもしれない。

 減収に歯止めをかける策として導入した2ステージ制とチャンピオンシップ(CS)のメリットを、おいそれと手放していいものか。昨シーズンのCS決勝は地上波テレビで放送され、第2戦では平均視聴率10%を超えた。これは1年間にJの試合に足を運んだ人の数と、ほぼ同じである。依然、マスにリーチする地上波の影響力は大きい。1シーズン制の「復活」と引き換えに、その利点を失うことに利があるか。そのジャッジはJリーグの分かれ道となりかねない。

 放映権料の使い道も十分に議論を尽くす必要がある。使い方を誤れば、10年後の未来から一気に2100億円が消えることになるだろう。市場拡大への有効な投資が未来のJリーグの浮沈を左右する。大金にあぐらをかいて、浪費するわけにはいかない。

 チェアマンの手腕、真価が問われるのは、まさしく、これから。持続可能なJリーグを構築するための長期的なビジョンとは何か。それを、いまから考えておかなければならない。チェアマンに期待するのはそこである。金(放映権)の切れ目が、縁の切れ目――。間違っても10年後のJリーグが、そうならないために。