1993年に開幕し、今年で25シーズン目を迎えるJリーグ。新年も1月の半ばとなり、新シーズンに向けた各クラブの動きもおおよそ明らかになってきている。昨シーズンからの大きな変更はJ1が3年ぶりに1ステージ制に戻り、純粋な年間勝ち点で優勝が決まることだが、その変更を決定付けたのがイギリス動画配信大手「パフォーム」グループによる有料放映権の獲得だ。



 その放映権はなんと10年間で総額2100億円。これまで5年契約でJリーグの試合中継を担ってきた「スカパー!」の約4倍にあたる数字になる。もともと3年前にJ1を2ステージ制にしてプレーオフに当たるチャンピオンシップを導入したのは、レギュラーシーズンに加えて固定的な山場を作り、地上波での放送などを通して資金や注目度をアップさせる狙いがあった。

 そうした変更は一方で根強いサッカーファンや選手の不満を招いていたわけだが、パフォーム・グループの参入により少なくとも資金面の問題は一気に解決されることとなり、Jリーグのトップである村井満チェアマンも1ステージ制の復活に躊躇うことはなかった。

 J1、J2、J3のすべての試合がパフォーム・グループの手がける「DAZN(ダ・ゾーン)」という配信サービスにより生中継される今シーズン。放映権料の分配金の大幅アップによるチーム編成への影響が大きな関心事となる。分配金には「均等分配金」と「傾斜分配金」があり、前者はJ1が3億5000万円、J2が1億5000万円、J3が3000万円を均等に分配される。後者は30億9000万円を原資として、順位に応じて傾斜的に分配されることが確定している。

 優勝クラブはさらに優勝賞金を得られるため、2017シーズンのJ1王者は均等分配金3億5000万円、傾斜分配金15億円、優勝賞金3億円を合わせて21億5000万円を得ることになる。これは昨シーズンの4倍以上の額で、優勝クラブには潤沢な資金をもたらすことになる。リーグ全体でクラブの資金力が底上げされるため、外国人選手を含めた戦力の補強費が潤沢になることは歓迎するべきことだ。

 もちろん資金力はトップチームの人件費だけでなく、下部組織の育成や施設の充実にもつながるが、選手の補強はチーム力や注目度を引き上げる大きな力になりうる。今季からは外国人枠のルールも改編され、5人までクラブに所属させることができる(1試合の出場は3人+アジア人枠1人まで)。サッカーファンなら誰でも分かる様なスター選手を買うには十分な資金とは言いがたいが、これまでより外国人選手の市場価値の平均値が大幅にベースアップされるはずだ。

 上位の傾斜分配金を見込んで高額な選手を補強するのは1つリスクになるが、それも含めてファンの関心を呼ぶはず。同じJ1でも順位により最大で十数億円の差が出るため、上位のビッグクラブ化が進み、これまでよりリーグ内の「格差」が出てくることで、特にJ1は1ステージ制に戻る上で、優勝争いの寡占化による弊害を懸念する声もある。しかし、これまでは優勝タイトルやACLの出場権、残留争いに絡めない中位チームの“中だるみ”が存在したことも事実。傾斜分配金の額が大きければ、1つでも順位を上げることにより意味が出てくるメリットは小さくない。

 より大きな問題はリーグ戦のウェートが重くなり、相対的にカップ戦やACLが軽視される傾向が強まるということ。もちろん2008年にガンバ大阪が優勝して以降、8年間も遠ざかっているアジア王者に輝き、UAEで行われるクラブW杯に出場すれば名誉だが、ACLの優勝賞金は3億円で、仮にクラブW杯で優勝してもJリーグの優勝で得られる金額の半分に過ぎないのだ。

 昨季から「ルヴァン杯」に名称が変更されたJリーグ杯も優勝賞金は1億円で、今のところ増額の発表は無い。天皇杯も同じ1億円で、翌年の富士ゼロックス・スーパー杯で勝てば3000万円、負けても2000万円が得られるが、それでもリーグ戦との格差は大きい。ルヴァン杯や天皇杯はCSや地上波で放送される見込みだが、これらの中継がDAZNでの放映権に含まれない以上、そこから直接的に分配金を引っ張ってくることはできない。今後、Jリーグがどう対策を立てて行くか興味深いところだが、当面は難しい課題の1つになるのではないか。(文・河治良幸)