ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏は、違法動画への「リンク」について言及する。

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 大胆なリメイクで話題を集め、興行収入70億円を突破した「シン・ゴジラ」。その「シン・ゴジラ」を上回るハイペースで大ヒットしているアニメ映画が、新海誠監督の「君の名は。」だ。

 興行収入は既に111億円を超え、200億円超えも見えてきた同作品。その製作委員会がツイッター上で行っているネット上の著作権侵害対策が大きな話題を集めている。ツイッター上で「映画『君の名は。』製作委員会著作権担当」という専用アカウントを立ち上げ、ネット上の動画サイトに違法アップロードされた同作品が視聴できるURL(リンク)をツイートしているツイッターユーザーに対し、著作権侵害である旨の注意喚起と、当該ツイートの削除を求めるコメントを、返信の形でツイートしているのだ。

 まだ公開中でDVD化もされていない作品が無料で視聴できるネットに流出することは、製作委員会にとっては大きな痛手だ。ネット上に公開中の映画が流出することは、ファイル共有ソフトや動画投稿サイトが普及してきた十数年前から映画業界が抱える大きな悩みだった。

 違法アップロードに対して映画業界も手をこまねいていたわけではない。ハリウッド各社は、政治家に働きかけたり、違法アップロードされた映画のリンクを集めた情報サイトに対して訴訟を起こしたりするなど、対策は施しているが、あるサイトが潰れても別のサイトが新たに立ち上がり、いたちごっこ状態が続いている。

 日本の映画業界も、2000年代半ばに与党の政治家に働きかけることで、07年に「映画の盗撮の防止に関する法律」が制定された。12年には、議員立法で著作権法が改正され、違法な音楽や動画のダウンロードをするユーザーに刑事罰を科すようになった。

 ではなぜ、この『君の名は。』製作委員会は、違法な動画へのリンクをツイートしたユーザーをツイッター上で見つけたにもかかわらず、警察に通報するのではなく、直接ユーザーに語りかける形で呼びかけているのか。実は日本の著作権法では、ツイッターなどで違法にアップロードされた映画を閲覧できる動画サイトに「リンクを張る」行為は違法ではないからだ。「実力行使」ではなく「注意喚起」という形でユーザーに「お願い」する。そうすることで、著作権に関する普及啓発をし、同時に作品のPRにつなげたい狙いがあるのだろう。

 違法なコンテンツに「リンク」を張っただけで著作権侵害かどうかは世界的な問題だ。EUでは既にリンクを張っただけのケースでも著作権侵害が認められる事例が出てきており、日本でも現在、非公開の審議会でこの問題が話し合われている。だが、リンクという行為は、ネット言論において表現の自由の要となる要素。過度に規制することの悪影響も考慮されなければならない。ネットの自由を巡る諸問題は世界規模で新たな段階に入っているのだ。

※週刊朝日 2016年10月14日号