ノーベル文学賞がボブ・ディラン(75)に授与されると決まった。歌手の文学賞受賞は、115年の歴史上で初めてのことだ。

 日本の音楽家らに大きな影響を与えたディラン。『YAWARA!』『20世紀少年』などのヒット作で知られる漫画家の浦沢直樹さん(56)も、心酔する一人だ。4月の日本ツアーの6公演に足を運び、『ディランを語ろう』という本をかつて共著で出版した。

 そんなこともあってか、「ニュースが流れた後、『おめでとう!』と書かれたメールが友人たちから届いて。僕はなぜか『ありがとうございます』と返信していました(笑)」という。

 ファンになったのは14歳のとき。当時、修業のように毎日ボブ・ディランの曲を聴いていたが、よく理解できなかった。それがある日、「ライク・ア・ローリング・ストーン」を聴いて、「すべてわかった!」と思うほどの衝撃を受けた。

 1960年代に「風に吹かれて」などで“フォークのプリンス”とまで呼ばれていたのに、エレキギターを持ってあっさりとロックに転向。ライブでは聴衆におもねらず、好きな曲を好きなスタイルで演奏する。そんな姿を、浦沢さんは40年以上、敬愛してきた。

「ディランの歌の意味は、ある日突然わかる人が多いみたいですね。14歳のときにわかったと言っても、本当の意味がわかったのは『YAWARA!』で漫画家として成功した後。『ライク・ア・ローリング・ストーン』は、一人の女性にひたすら罵声を浴びせる歌。久しぶりに聴くと、ディランが罵倒しているのは実は、成功に酔った僕のことだとわかったんです」

 その後、漫画の作風をガラリと変えた。スリラー・サスペンス『MONSTER』を発表し、累計2千万部超の大ヒットとなった。

「ディランは過去の成功にこだわらない。いつも新しい作品を生み出しています。その影響でしょうね。今でも僕は、彼のような視点で作品を描くことを夢見ています」

 授賞式は12月10日。スピーチが注目されるが、本人は受賞の知らせもどこ吹く風でライブの日々だ。

「今年のツアーも、往年のヒット曲をほとんどやりませんでした。年間100公演以上の旅芸人のような生活。新曲ばかりでも、みんなを夢中にさせる。年を取るのが楽しそうで、僕もああいう生き方がしたいですね」

※週刊朝日 2016年10月28日号