天鐘(3月27日)明治時代のジャーナリスト宮武外骨は、ペンネームのようだが本名である。名前から奇人ぶりがうかがえる。外骨は当時の新聞や雑誌からも面白い話を選んで紹介していた。それらを集めた『明治奇聞』(河出文庫)の中で、眼鏡の話題を取り上げている▼裸眼の視力は正常だが、あえて掛ける“だて眼鏡派”が既に明治に横行したという。女性の関心を引くため、勉学で近眼になったふりをしたのが理由だとか。今は当時と違い、ファッション的な意味合いが強い▼1889(明治22)年の新聞に載った記事には「近頃はベラボウに大きな眼鏡を掛けるのがはやりだし—」とある。とんぼ眼鏡のブームが起こっているとの内容である。見る人たちをびっくりさせるほど眼鏡のサイズが大きく、話題をさらったのだろう▼記事は、今後サイズが易者の天眼鏡ほどになるのでは—とからかう。1964年頃も人気だったというから流行は分からない▼さて文部科学省の昨年の学校保健統計調査(速報値)では、小中高生とも裸眼視力1・0未満の割合が過去最悪になった。スマートフォンやテレビゲームが普及して、物を近くで見る習慣が影響しているという▼眼鏡やコンタクトレンズの必要もあるだろう。もし外骨がコンタクトレンズをする場面を見たら「まぶたの奥に掛ける眼鏡」と仰天して奇聞集に載せただろう。視力はいいに越したことはない。