ベントレーには、『ミュルザンヌ』と『フライングスパー』の2つのセダンがラインナップされている。このうち、ドライバーズカーとしての性格を色濃く持つのがフライングスパーだ。ハイエンドサルーンとはいえ、オーナー自らステアリングを握るなら、快適性だけではなく走りも愉しみたい。そこで、ベントレーは以前から、フライングスパーのV8エンジン搭載車によりスポーティな『Sモデル』を設定していた。しかし、それでも物足りない人も多かったのだろう。そんな欲張りなドライバーのために用意されたのが、6.0L W12ツインターボエンジンを搭載したベントレー最速のセダン『フライングスパーW12 S』である。

満を持して登場した『フライングスパー』W12ツインターボエンジン搭載の「S」モデル


フライングスパーは、2ドアクーペ『コンチネンタルGT』の4ドアモデルとして2005年に登場したサルーンだ。当初は1957年から1965年の間に作られたスポーティサルーンの名を受け継ぎ、『コンチネンタル・フライングスパー』というモデル名だったが、2013年にフルモデルチェンジを受け、軽量化など基本性能のブラッシュアップを行って『フライングスパー』となった。

『W12 S』が登場するまで、フライングスパーには3つのモデルがラインナップされていた。373kW(507ps)の最高出力を発生する4.0L V8ツインターボエンジン搭載の『V8』、同じV8ツインターボだが、388kW(528ps)に出力を高めた『V8 S』(下の写真)、そして、6.0L W12ツインターボエンジンを搭載して460kW(625ps)を発生する『W12』の3モデルである。




このバリエーションでわかるように、従来のフライングスパーの12気筒エンジン搭載車には『Sモデル』が存在しなかった。V8よりもパワフルなW12に「S」が求められるのは当然のこと。『W12 S』は登場するべくして登場したモデルといえる。


ベントレーの4ドアサルーンとして初の最高速度320km/h超をマークした『W12 S』


エンジン性能は、『W12』が最高出力460kW(625ps)、最大トルク800Nm(81.6kgm)であるのに対し、『W12 S』はそれぞれ467kW(635ps)、820Nm(83.6kgm)に高められている。

8速ATと4WDシステムによる0‐100km/h加速は4.5秒、最高速度は325km/hにも達する。スーパーカーならともかく、全長5.3mのラグジュアリーサルーンであることを考えると、驚異的なパフォーマンスといっていい。ベントレーの4ドアサルーンで最高速度320km/hを超えたのは、史上初めてのことだ。

サスペンションは、快適性を損なわず、よりシャープかつレスポンシブなセッティングに改められた。驚くべきことに、スタビリティコントロールのプログラムにまで手が加えられているという。スリップを許容するチューニングが施されたことで、さらに“攻める走り”が可能となる。

エクステリアでは、ブリティッシュサルーンらしいクロームが廃されたが、その代わりに、フロントグリルなどが「Beluga(ベルーガ)」と呼ばれるグロスブラックで塗装された。同じくブラック仕上げとなるホイールは21インチ。スタイリングは迫力があるが、よく見ると派手なエアロパーツの類がいっさい装備されていないのが印象的だ。






価格は2500〜2600万円? 「ハイパフォーマンスサルーン=ドイツ車」を覆すモデル


インテリアは、ダイヤモンドステッチが施された2トーンのレザーなど、「Sモデル」限定のカラーで仕上げられている。また、ウッドパネルに代わって、新たにカーボンのトリムが標準設定された。ヘッドレストには「W12 S」の文字がステッチで縫い付けられている。




『フライングスパーW12 S』の日本での価格はまだ発表されていないが、『V8』と『V8 S』の価格差が155万円であることから、おそらく2500万円から2600万円となるだろう。

メルセデスAMGのラグジュアリーサルーン『S63 4マチックロング』が2483万円だから、この価格でベントレーの史上最速サルーンが手に入るのはお買い得でもある。「ハイパフォーマンスサルーン=ドイツ車」という既成概念を覆す、刺激的な1台であることは間違いない。