ゴルフ場のなかには、ハーフパンツを履く際はハイソックスの着用を義務付けているところもあります。なぜハイソックスを履かなければならないのでしょうか?

ハーフパンツにハイソックスのドレスコードは日本だけ

 ゴルフは厳格なルールやマナー、ドレスコードが存在する紳士淑女のスポーツであり、スコットランドが発祥の地といわれています。

 ジャケットや襟付きのシャツにチノパン、革靴を履いてクラブハウスに入場するのが一般的ですが、気温が高い6〜8月の間はジャケットの着用を任意にするなど、ドレスコードを緩めるゴルフ場も増えています。

ハーフパンツとハイソックスを組み合わせたスタイル 写真:Getty Images
ハーフパンツとハイソックスを組み合わせたスタイル 写真:Getty Images

 ゴルフは「炎天下のなか長ズボンでプレーするスポーツ」のイメージがあるかもしれませんが、ラウンド中はハーフパンツの着用を認めているゴルフ場がほとんどです。しかし名門のコースのなかには、ハーフパンツ時はハイソックスの着用をドレスコードとしているゴルフ場もあります。

 暑さを軽減するためにハーフパンツを着用しているにも関わらず、ハイソックスを履くのは本末転倒な気もしますが、なぜこのような文化が生まれたのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「実はハーフパンツにハイソックスの組み合わせをドレスコードとして取り入れているのは日本だけです。ハイソックスを履く文化は、ニッカポッカを履きながらゴルフをプレーするスタイルと合わせてスコットランドから伝わり、日本で独自に解釈されたものです」

「ニッカポッカが誕生した背景には、ゴルフスラングでいうと『卵を産む』ことの防止で、不正をしないことを示す目的があったといわれています。卵を産むとは、OB周辺や林のなかにボールが飛んでいきロストした際に、穴の空いたズボンのポケットからボールを落とし『ここにあった!』とインプレー以外のボールを落としてプレーする不正行為です」

「しかしニッカポッカであればズボンの裾が内側に折れているので、なかをつたってボールを落とすことができません」

 現代でも林のなかなど、同伴者の目が届かないところで卵を産むゴルファーは少なからずいます。では、ハイソックスはどのような理由で履くようになったのでしょうか。

「スコットランドには、ハリエニシダと呼ばれる黄色のトゲを持った花がリンクスのなかに多く咲いています。ハリエニシダが多く咲いている場所にハーフパンツ、ローソックスでボール探しにいくと足が傷だらけになってしまうため、ハイソックスを履いて足を保護する文化が根付きました」

「日本のゴルフ場に体を傷つけるような毒のある花は咲いていないので、ハイソックスを履く必要は本来ないのですが『ハーフパンツにはハイソックス』のスコットランドで生まれた文化を上辺だけなぞって取り入れている状態です」

 ゴルフの歴史や文化を重んじてプレーすることは重要ですが、プレーの快適さが失われたり現代のファッション的にも時代に合っていなかったりするので、ハイソックスは日本の文化に合わないといえるかもしれません。

意味なく存在する独自ルール

 さらに飯島氏は、ハイソックス問題に加えて「くるぶし問題」も存在すると話します。

「マナーを議論するフェローシップ委員会では、たびたび『くるぶし問題』が議題にあがります。例えばスニーカーソックスはNGだけど、くるぶしが隠れる靴下ならOKとするゴルフ場もあります」

スニーカーソックスはNGだが、くるぶしが隠れる靴下ならOKとするゴルフ場もある 写真:AC
スニーカーソックスはNGだが、くるぶしが隠れる靴下ならOKとするゴルフ場もある 写真:AC

「くるぶしが隠れているかどうかがドレスコードの基準となります。ほかにも『目立つ赤色の靴下は禁止』など色を指定しているゴルフ場も存在します。ゴルフ場のHPを確認すると、ドレスコードの詳細が出てくるので確認してから予約すると良いでしょう」

 若年ゴルファーが増加傾向にあることを考えると、ブラック校則のような独自のルールを意味なく守り続けることは時代錯誤といえるかもしれません。

 特定のスポーツが流行るためには、ウエアのカッコよさや可愛さも重要であるといわれています。

 今年のゴルフフェアでは、さまざまなブランドからおしゃれなウエアが発表されていたので、時代に合わないルールには固執しすぎないことが新規ゴルファーの裾野を広げるひとつの方法かもしれません。

ピーコックブルー