河瀬直美監督がエグゼクティブディレクターを務める「第4回なら国際映画祭2016」のクロージングセレモニーとコンペティション授賞式が9月22日、奈良市のならまちセンターで開催され、最高賞の「ゴールデンSHIKA賞」を、イランのアイダ・パナハンテ監督作「NAHID(ナヒード)」が受賞した。

 インターナショナルコンペティションは、次世代を担う若手作家を発掘することを目的とする、同映画祭のメインプログラムで、世界各国の若手作家から応募された約1700本の中から8本がノミネート。「ゴールデンSHIKA賞」受賞監督は、奈良を舞台に映画を製作するプロジェクト「NARAtive」での製作権が与えられる。

 この日、パナハンテ監督はスケジュールの都合で来日がかなわなかったが、代理でトロフィーを受け取ったプロデューサーのカタユーン・シャハビは、受賞の喜びと共に、映画祭への感謝の意を表した。奈良で撮影する映画企画「NARAtive」の構想を問われると、今回の映画祭期間中、毎日和食を食べたという経験から、「地元のレストランを親子3世代で営む家族の姿。モダンな日本の社会と古風な家族の営みを描くような作品が思い浮かんだ。まだ話していないが、アイダ(・パナハンテ監督)も賛同してくれると思う」と語った。

 インターナショナルコンペティションの審査員長を務めた三上博史は、「ゴールデンSHIKA賞」の選出は「とても悩みました。日に2本ずつ見せていただいて、何を選んだらいいか疑問に思ってきた。作品の優劣ではなく、どういうところで選ぶか考えました。完成度の高い作品はありましたが、今後この奈良とフィルムメーカーとのコラボレーションを考えて選びました」と審査基準について説明。審査員として参加した感想を問われると、「おもてなしの極意。ただのおもてなしでなく、みなさんが1本何か通ったものを持って接してくださった。海外の映画祭にも参加しているがこのように温かい映画祭は初めて。このまままい進してほしい」とホスピタリティあふれる映画祭を称えた。

 なお、学生映画部門「NARA-wave」の最高賞「ゴールデンKOJIKA賞」は、井樫彩監督の「溶ける」だった。そのほか、エグゼクティブディレクターを務めた河瀬直美監督から、アメリカで開催されるフラハティフィルムセミナーへの参加権を授与する、フラファティ賞、木下グループが才能あふれる日本人クリエイターを発掘、支援するプロジェクト「木下グループ新人監督賞」との連携企画で、本映画祭から1人がシード権を獲得することが発表された。

 3月に奈良市からの補助金カットが決まり、開催が危ぶまれていたが、各方面の支援により無事開催にこぎつけた。2014年の前回は4日間で総動員数1万8459人、今回は6日間で3万1451人を動員した。最終日を迎え、セレモニーでは司会や実行委員会会長が感極まる一幕も見られた。河瀬監督は、「開催が危ぶまれる映画祭でしたが、多くの支援によって支えられた。司会が泣き、実行委員が泣くという熱量、彼らの思いが感無量。250人のスタッフが毎日会場に足を運んでくれ、一人ひとりが自分ごととして関わってくれる映画祭になった」と感想を述べる。

 会期中は台風接近で、連日の悪天候が予想されていたが「傘マークが1週間並ぶ中、オープニングには夕陽が出て、夜が更けて満月が顔を出しました。これがおそらく『なら国際映画祭』が持っている力。ネオンもなく、映画館もなく、経済的に裕福とは言えない奈良ですが、空があり闇があり、風が吹き、毎日太陽が昇り、沈みます。毎日見える太陽に価値がないとは誰も言えないと思います。その価値はお金には換算できません。あちこちの会場で、お金に変わらない価値がここにあると感じていただけたと思う。また2年後に、皆さんの力を借りて開催したい」と笑顔で締めくくった。

 また、映画祭クロージング作品として、深田晃司監督の「淵に立つ」が上映され、深田監督と女優の筒井真理子が舞台挨拶を行った。

受賞作品は以下の通り

▽インターナショナルコンペティション
ゴールデンSHIKA賞
「NAHID(ナヒード)」アイダ・パナハンデ

審査員特別賞
「チェッカーで(毎回)勝つ方法」ジョッシュ・キム

観客賞
「真白の恋」坂本欣弘

▽「NARA-wave」
ゴールデンKOJIKA賞
「溶ける」井樫彩

観客賞
「チョコレートとケーキと法隆寺」向井啓太

▽フラファティ賞
NARA-wave「川崎競輪」水野さやか