実話がベースになっている作品は、演じる側にも相応の覚悟が求められる。特に、命がテーマとなっていればなおさらだ。「泣き虫ピエロの結婚式」の志田未来と竜星涼は密度の濃い撮影で集中力を維持し、命の尊さと真正面から向き合った。真摯に取り組んで重ねた愛の軌跡は、今を精いっぱい生きることの大切さが伝わる感動を生んだ。(取材・文/鈴木元、写真/江藤海彦)

 共に1993年生まれ。所属事務所も同じで、竜星がデビューして間もない2010年にTBS「ハンマーセッション!」、テレビ朝日系「秘密」と続けて共演しているだけに、3度目の顔合わせには相通じるものがあった。

 志田「安心感がありました。相手役が竜星くんと聞いた時に、良かったなってすごく思いました。熱い方だし、お芝居も取り組み方に関しても現場ですごく刺激を受けました」
 竜星「変に気負うことも格好つけることもなく、さらけ出せる唯一の女優さんって感じがするし、ずっといいものをくれるから僕も純粋に受けて返したいなっていう気持ちがありました」

 人を笑顔にすることが好きでピエロの見習いをしている佳奈美は、親友の紹介で出会った陽介に恋心を抱く。だが陽介は、生まれながらにじん臓疾患のため週3回の人工透析が欠かせない。佳奈美はそれを理由に突き放されても、いちずな思いをぶつけ徐々に陽介の心を開いていく。

 「すごく重たく、悲しい話ではあるけれど読み終わった後に心が温かくじんわりするなと思いました。佳奈美は本当にまっすぐだし、太陽のような子だなと。その一生懸命さに涙が出てきました」

 2人は交際を始め結婚の約束をするが、結婚式の前日に陽介の病状が悪化。医師からは残酷な宣告を受けるが、佳奈美は涙を一切見せず陽介のために人生をささげる。その気丈さが心を打つ。

 「心から愛している人を幸せにしたいという佳奈美の気持ちは、完全ではないですけれど理解しようとしました。マイナスのことを考えずに、すべてプラスになると思って突っ走っていく姿は女性としてあこがれるし、格好いいなって思います。表情は笑っているけれど心で泣いていることが多い女の子なので、その切り替えを意識して演じました」

 一方の陽介は、自身の病状をよく知っているがゆえに人と深く接しようとしない。佳奈美に対してもぞんざいな態度を取り、時には辛らつな言葉も浴びせる。竜星は、役の上とはいえ心が痛まなかったのだろうか。

 「僕が実際にそういう立場になったら、どれだけ好きになった人に対しても自分の先が分かっている状態の時に迷惑をかけられない、責任を持てないというところは共感できるなと思いました。そこが陽介の優しさだし、ジレンマ、葛藤(かっとう)がすごく多くて大変だなあと思いながらやっていました」

 撮影は昨年夏の10日間山場となるシーンが多かったこともあり、2人は「密度は濃かったですね」と声をそろえる。佳奈美と陽介の半生を凝縮して体現したことで、大きな糧を得たようだ。これから何度も現場を共にすることになるはず。互いに成長をし続け、次はいかなる関係性を見せてくれるのか楽しみになってきた。